すぐにサヨナラ?3
踏み締めた小枝がぱきりと音を立てた。
暗い山道を、手探りで登る。真上には、高い樹の枝が葉を繁らせて月を隠している。
微かに潮騒の音がする。海が近いのだろう。
迷いはしなかった。分岐点は無かったから。
しばらく行くと、拓けた場所に出た。山の中腹。崖になっていて、眼下には海が広がっていた。
無理して急いで登って、呼吸が苦しい。
額の汗をそのままに、顔を上げた。
崖の先端にいる彼の背中を見つめた。その姿は赤く照らされ、闇に浮かび上がるように見えた。
潮騒。パチパチと燃える音。焦げる臭い。
ルーは、海に浮かぶ幾つもの船を魔法で燃やしているのだ。
黒かった瞳を妖しく赤く輝かせて。
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「ねえ、ルー。ルーはずっとこの島に一人でいるの?」
そう問うたのは、眠る前。私は床に毛布をかぶり横になっていた。ルーは私の横を通り、普通にベッドで寝ようとしていた。
いやいや、女の子がベッド優先なんて思ってないよ。私は彼のお宅にお邪魔させてもらっている身ですから。おかしいなんて思ってないよ。ソファーで眠ることも考えたんだけど、恥ずかしい話心細くて、ルーの近くだと安心する。
いやいや、だからと言って、まさかさすがに二人でベッドはまずいから!例えルーが、昨日は一緒に寝たし今更だろ、なんて言っても今更じゃないから。
…と言うわけで床で眠ることになったんだけど。
側を通る足を手で捕まえて、会話したいと訴えてみた。彼が少々疲れたように、でもちゃんと触れてきたので聞いてみた。
「ああ、ずっと一人だが?」
「寂しくなかった?」
「寂しい?」
しばし考えてルーは、
「長いこと一人だと、それが普通になってくる。寂しいなんて感覚忘れたな。」
と皮肉げに答えた。
その発言、究極寂しい!
私はなんだか胸が痛んだ。明日帰るのを延ばしても…と思ったりした。