分岐点8
待っていたかのように、部屋にジーク達の私兵らしき武装した者たちが大勢入ってきた。ルーの行く手を阻むように、ボーガンのようなものを構える。
Γムダだ」
一斉に放たれた矢が、ルーの周りに起きた風に捕らわれて渦を巻き、地に落ちた。
ルーが、怪訝な顔をした。
Γリュカ貴様、何を考えてる?」
こんなもの通用するか、とルーが一歩ずつ近付いてくる。
Γルー」
何か変だ。たくさんの結界を破らせたり、通用しない矢を放ったり。魔力は生きてる限り底を付くことはないと聞く。けれど、体力は違う。
力を使うほどに疲れるのだ。
そうだ、これはわざと体力を削り、動きを鈍らせるために…
Γルー、来ちゃダメ!」
嫌な予感がする。
私の声に一瞬足を止めた彼を見て、リュカは急に私の髪を乱暴に掴むと、ルーに突き出すようにした。
天窓からの月光に、私の赤く腫れた頬に気付いたルーが怒りを露にする。
Γ貴様!」
髪を掴まれたまま、慌てて手で頬を隠す。リュカは、私の後ろで黙ったままだ。わざと計算してやっている?
ルーの手のひらに炎が踊る。
それを見て、リュカは私に囁いた。
Γお別れです、ミヤコ。」
言葉と同時に、髪を掴んでいたリュカの手が、私の頭と肩をいきなり突き飛ばした。
Γきゃっ?!」
前につんのめる形になり、それを見たルーが反射的に受け止めようと両手を伸ばした。
ドッ
鈍い音がした。倒れる前に、体に衝撃を感じた。
私は、花火のように飛び散る自分の血を見た。
リュカの光の弾が胸を貫き、声も出せずに私は倒れた。
Γミヤ…コ」
床に膝をつけて私を受け止めたルーの声が震えている。
口から血を吐いて、急速に力を失うのを感じた。
ああ、どうしよう
わたし、しぬのかな
こんなにはやく…
ルーを、かなしませて
命の代償