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分岐点7

ジークの館に集まった者たちが、青い顔でリュカを見る。


Γリュカ殿、ほ、本当にあの魔法使いを倒すので?」

Γ何度も話したはずです。ここで彼の力を削ぎ、ミヤコに止めを刺してもらう。そして、彼女に次の魔法使いになってもらう。ルシウスが受け継いだ洗脳の力は、相手を殺して取得した場合は一代しか持てない。ミヤコは力があっても扱う術を知らないから、操りやすい。ジーク殿を玉座に据えるために必ずや役に立つでしょう。」


先程のことで機嫌の悪いジークは、自室に閉じ籠っている。


Γあの魔法使いを倒さなくても、リュカ殿の力だけでも陛下を国王の座から下ろすことは可能でしょうに」

Γ買い被りすぎです。私にはそこまでの力はとても…。それにあったとしても、私は幼い頃から知っている陛下に直接手を下すことは忍びない。」


怯えて耳を押さえる貴族を横目に、リュカはそっと嗤った。


***********


目を閉じていた私は、静かになったことに気付いた。

音がし出して、二日目の夜。

立ち上がろうとして、ふらつく。何も食べていない体と心の苦しみとで、消耗しきって力が出ない。


Γ終わったようですね。」


翔んできたリュカが、私の腕を掴み引き上げる。

それから壁から離れ、中央の当たりまで引っ張られて移動した。


Γ先に言っときます。」


リュカが、私を見ずに遠くに目を向けたまま言う。


Γ…あなたを傷つけることを謝罪します。」

Γ?リュ…」


突然正面の壁に穴が開き、土埃が舞った。月光の射す薄闇に、美しい赤い瞳が私を映した。

壊れた壁から入ってきたルーは、結界を破ることで力を消耗していた。うっすらと汗をかき、荒く呼吸している。


私は、ルーの視線に耐えられずに顔を俯けて、ぎゅっと目を瞑った。

拒絶したくせに、私は嬉しくて…。ルーにまた会えて…、彼が私を追いかけて来て…


そんな自分が恥ずかしかった。


Γ逃げるな」


呼吸を乱しながらも、ルーの声は落ち着いていた。


Γ逃げるな、ミヤコ」


その声に怒りはない。

顔を上げると、ルーは不安げな私を見つめて微笑んだ。


Γお前がいないと寂しい。」


もう残っていないと思っていた涙が雫を作り、頬をポロポロと流れて行った。



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