分岐点5
Γ…呆れた男。」
部下に付き添われて部屋から去っていくジークを、リュカは蔑んだ目で見送った。
それから、座り込む私に向いた。
Γ酷い顔ですね。」
言われて、手を顔に触れて確かめる。
頬は熱を持っていてジンジンするし、額は小さくコブになっていてアザもできてるかもしれない。目なんか真っ赤だし…
俯く私の額のキズに、リュカが手を置いた。
Γボロボロですね。……なぜ自ら別れを選んだのですか?好きだったのでしょう?彼を。」
額のキズだけを癒し、リュカは不思議そうに聞いてくる。
Γ……好きだった。だから」
Γ理解できません。ですが、予知で見た通りになりました。」
Γ………………え?」
見上げた先で、リュカは嬉しいような悲しいような複雑な表情をしていた。
Γ私を、どうする気なの?」
ルーのことで頭が一杯で、予知など何も考えていなかった。もしかして、私は間違えた?
Γもうすぐ予知が完遂する。あなたは最初から最後まで私の駒。あの男の心を奪い、虜にし、魔法使いとしての全てを終わらせる鍵。」
Γどうして?私、別れを選んだわ」
Γなぜわざわざあなたを召喚したと思います?あんな大変な魔法、予知ではっきり視なければ実行しませんよ。ふふ、あの男はあなたが思うよりも遥かに…」
ドオオン!!
天井より高い所で、突如轟音が響いた。その音の余韻が終わらないうちに、すぐに新たな轟音が繰り返す。
天井を見上げていた私は、堪えきれずに顔を覆った。わかってしまったから。リュカは、くすりと笑った。
Γほらね。やはり来たでしょう?ルシウスは簡単に諦めるほど優しい男ではない。ミヤコ、あなたはルシウスが全てを諦めても、唯一欲しい存在になったのです。あなたが思うよりもずっと…既にあなたの虜なのだから。」
幸せはまだ遠く




