分岐点4
するりと服の合わせから手を差し込まれる。
Γミヤコ」
Γ………」
体に力が入らない。まるで他人事のようで、私はぼんやりと視線を床に落としていた。
何もかもどうでもいい…
服を脱がせようとしたジークの手が当たり、カランと耳からイヤリングが落ちた。冷たい床を小さく跳ねて転がるのが目に映った。
銀色と紫の色彩に、イヤリングを贈ってくれたルーの得意気な笑顔が浮かんだ。
ジークが、私の唇を奪う。
Γいっ、つ?!」
舌と唇から血を滴らせて、思わずジークが私を突きとばす。
震える手をついて、私は体を起こして唇を拭った。
Γ……さわるな」
まるで自分の声じゃないみたい。泣いて掠れた低い声で、私はジークを睨み付けた。噛み千切るつもりで歯を立てた彼の唇は血だらけだ。
Γわたしに、さわるな」
服を整えて、手で自分の喉元から胸下をさすった。嫌だ。ルーの残した熱を汚されたくない。ジークに触れられた所が気持ち悪い。
ルーに触れられた時は、甘く痺れるような感覚だったのに。
垂れる血にしばし茫然としていたジークが、私を睨み付けた。
パァン!
怒りのままに、私の頬をぶった。勢いで倒れた私は額を打って眩暈で直ぐには立ち上がれなかった。ジークが近づき、もう一度私に手を振りかざした。私は精一杯目を逸らさずになんとか睨み付けた。
Γやめなさい。」
後ろからの声と同時に、ジークがその姿勢のまま動くのを止めた。それがリュカの拘束の魔法だと気付いて、私は立ち上がり、仕返しにジークの頬をバチンと叩いてやった。
動けない彼が、バランスを崩して倒れた。
ふらふらと歩いて、落ちていたイヤリングを拾い、私は手のひらに包むと抱き締めるように胸に当てた。
この想いだけは、絶対に守りたい。
そう決めると、少し力が湧くようだった。
 




