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分岐点2

Γくっ」


風圧に跳ばされたリュカは、光の弾を作り上げた。何百ものそれが空中に漂い、一斉に少年に降り注ぐ。

体を貫くはずの弾は、彼の体を避けるように通り消えていく。

間髪入れず、雷撃の魔法を繰り出そうとしたところを、風の刃がリュカの肩を切り裂く。


Γっ!」


結界を張ろうとすれば、火で炙られ霧散した。

翔んで間合いを取ろうとしたら、風が腹を貫いた。


Γうあっ」


治癒が追い付かず、地面に倒れこむ。


Γもう終わりか」


立ち上がろうとするリュカの肩を足で踏み、ルーは冷笑した。


Γ10年、探しました。あなたをここで…ぐっ」

Γ俺を倒せるとでも?」


ぐっと足に力を入れて、リュカを地面に縫い止めてルーは見下ろす。


Γあなたは、災いをもたらす。我が王、我が国のためにも、消えてください!」

Γムリだな」


肩から腹の傷に足を移して、強く踏みしめてルーは赤い瞳を残忍に光らす。


Γうぐ…後顧の憂いを断たねば…」


体を起こそうとするリュカを蹴り倒し、ルーは踵を返した。


Γ出直すがいい。貴様には、守るべきものがあるのだろう?」


背中を見せ土煙の中去っていく仇を、リュカは睨むことしかできなかった。


***********


あれから40年。

あの時は、焦燥と不安ばかりが募ったものだ。

だが、予知を視て杞憂だったと知った。

未来は、思い通りに動いていくのだ。


その鍵となる娘を、今リュカは見つめていた。

暗い森の中、樹の根元にしゃがみこみ、口元を手で押さえて声を殺して泣くミヤコ。

同情はしない。理解しがたい感情に翻弄されて、哀れと思いはするが。


Γだから言ったのですよ、後悔すると…」


ゆっくりと手を彼女に向けて伸ばす。


Γ来なさい。」


常に働いていたルシウスの監視が、今はない。心に余裕の無いなど、あの男らしからぬ。


Γさあ…」


ふらふらとミヤコが顔を上げた。泣き腫らした目で、虚ろにリュカを見た。

それから目を瞑り、手をリュカの手に重ねた。


予知の完遂が近い。長年のつかえが下りた気がした。

ここが、分岐点。


憔悴した顔で、彼女は目を閉じて涙を流し続ける。

最高の魔法使いに愛された女。彼女は必要な駒だ。



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