祭のあと10(ルー視点)
白く吸い付くような柔らかい肌をしていた。豊かな胸や細い腰に、息を呑み見とれた。
花火の光に浮かび上がるミヤコは美しかった。溢れる涙すら綺麗だと思った。
最強の魔法使いであるこの俺を、お前はいつも心配していた。人間のように心を持つ者として、対等に接していた。一人の男としてお前が見ていることに、肌が粟立つほどの喜びを感じた。
だからこそ、お前は手放せと言う。頑固なお前でも、これだけは譲れないと思った。泣いてもわめいても絶対に離さない気持ちで、強引に婚姻を申し込む。
沈黙は、ミヤコが迷っている証拠だ。
何も……何も考えなければいい。
俺がいないと生きていけないほどになればいい。
たくさん愛して快楽に呑まれ、今だけに夢中になればいい。予知も未来も忘れてしまえ!
涙が乾くまで体を重ねていようと思った。ミヤコの体に俺の痕を強く付けたのは、離れていきそうな心を捕らえたいがため。
それなのに、どうして離れることを許してしまったのか。
僅かに触れたミヤコの心は、千々に引き裂かれるような痛みを伴うものだった。
ミヤコは自らのその痛みを堪えて、それでも尚、俺のことを深く愛していた。自分のことよりも俺のことばかり想っていた。
Γ……なぜだ」
俺が茫然となりながら問うたのは、ミヤコへか自分自身にだったのか。
Γ深く互いを知るほどに、余計苦しむ…」
透明に澄んだミヤコの声音が、震えながらも俺を拒絶する。
Γ私は、あなたの妻にはなれない。」
鍵を開けたミヤコが、部屋をゆっくりと出ていく。
扉の閉まる音を聴いても、俺は振り返って見ることもできなかった。先ほどまで捕らえていた彼女がいた辺りを俯いて見ていた。
そこには、片方だけの銀のイヤリングが残っていた。ぼんやりとそれを見つめながら、自分の体からミヤコの熱が、肌の感触が冷えて消えていくのを待った。
反対に、じわりと心にしみだしたのは、逃げ場のない苦しみだった。俺はその息苦しさを散らしたくて、横の壁をにらんだ。
バアンッ
轟音を上げて、壁に穴が開いた。




