すぐにサヨナラ?2
夕食を作るのは、さすがに手伝った。
…と言っても、配膳とかだけど。
切って、味付けして、炒めて…
無駄の無い動き。
テキパキと調理する彼は、一流の料理人のようだ。
「すごい慣れてるね。」
邪魔にならないよう、台所の隅に控えていた私。
話しかけたくても、今はムリかなと思っていたら、なぜかタイミング良く私を振り返り触れてくれた。
感心しきりで、
「料理歴長いの?」
と聞いたら、
「確か50年ほどだったか。料理を始め出したのは。」
と、何喰わぬ顔でのたまった。
「はい?50?!」
「…ああ。」
ふっと笑い、ルーは言った。
「俺は、59歳になる。」
「はい?え、ええー、はい?」
「しつこいぞ。」
茫然とする私を放って、再び背中を見せる彼を見た。
すっと背筋の伸びた凛とした佇まい。
無駄の無い引き締まった細身の体。
若く整った顔つき。
10代終わりぐらいか20代始めにしか見えない。そうか、魔法使いって不老なのか。凄い、ファンタジー!
でも、50年って…
短くはない時間。
ずっと一人だったのかな?料理を作ってくれる人いなかったのかな?
寂しくなかったのかな?
ルーは、拾った私のことどう思ってるのかな?
明日、私が元の世界に帰ったら、ルーはまた一人になるのかな?
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夕食の後、お風呂を使わせてもらった。ワンピースを脱いで、わざわざ買ってくれたルーに申し訳なさが募った。
私、こんなに世話を焼いてもらっといて御礼もできていない。
シャワーだけのお風呂だったけど、お湯が普通に出た。湯上がりに聞いたら、地下にある湯脈から引いてるそうだ。
おそらく魔法を使って引いたんだろう。そういえば、台所ではガスコンロのように火が普通に使えた。あれも魔法だった気がする。
私の知るゲームの中の魔法とは違う。ルーは呪文を唱えたりしない。まるで呼吸するように魔法を使っている。不思議だな。
いや、でももうここから去る私には考えたところで詮の無いことか。




