祭のあと8
Γひっく…う…ふう」
暗い部屋の中、私の啜り泣く声だけが響く。
壁に付いた腕に額を押し当て、ルーは苦しそうに目を閉じていたが、だいぶ経ってから目を開けて壁を見た。
Γ……俺は、本当にお前を妻にしたいと思っていた。」
Γうっく、ひっく…」
Γお前は恥ずかしがっていたが、魔法使いの夫婦に本当になれればと…」
顔を両手で覆いながら、私は懸命に首を振った。
Γ……ミヤコ」
Γわたし、歳を取るわ。いつか、ひっく…あなたより年上に見られるように、ひっく、なる」
Γそれでもいい」
Γ皺ができて、髪だって白くなって…」
Γそれでもいい」
Γひっ、く…あっという間に…死んじゃう」
Γ構わない」
Γルーを、苦しめてしまう」
Γっ、ミヤコ」
しゃっくりあげる私の前に座り、ルーがわたしの肩を掴む。
Γ俺は、はっきりわかりもしない未来のことなど、どうだっていい!大事なのは、今だ。」
Γルー」
Γだから、ミヤコ。俺の妻になれ」
言うなり、ルーが私を抱きかかえベッドの端に座らせた。涙で霞む視界に、私の前で躊躇なくひざまずく彼がいた。私の指にルーの指が触れようとしたが、途中で止まった。そして、座る私の膝を挟む形で、そのままベッドに手をついた。
激情を秘めた瞳が、私を見上げる。
Γ…例え時が過ぎて、どんなにお前が変わろうが俺の心は変わらないだろう。だからミヤコ…俺の妻に、なって欲しい。」
涙でグシャグシャな顔で、私はルーを見つめた。
胸が震えた。
嬉しいのに、とても苦しい。一緒にいたいのに、離れたい。好きなのに、嫌って欲しい。ああ、もう頭の中がぐちゃぐちゃで、私はどうしたらいいのだろう。
流されたいと思う反面、ダメだ!と心が拒絶する。
ただただ苦しくて、私は涙を流し続けた。
そんな私を、ルーはひざまずいたまま長いこと待っていた。
だが随分待ってから、私の無言を了承と受け取り
立ち上がった。
ぎゅっと私を抱き締めると、そのままベッドに押し倒した。