祭のあと
頭が痛い………
Γう…頭痛が…」
Γ……二日酔いか」
ソファーに座っていたルーが、後ろから私の腰に手を回して引き寄せる。
Γわっ」
彼の膝の上に座らされ、後ろから抱き締められて固まってしまう。
慣れることなんてあるのかな。肩の辺りに顎を乗っけられて、頭痛を感じている暇もない。
Γルー、昨日、私酔っぱらって何かした?」
Γ覚えてないのか?」
Γ思い出せなくて、何か変な行動取ってたりしたかな?」
ちらりと後ろを見たら、ルーは複雑な表情で黙っていた。
Γえ?」
Γ……まあいい。それよりミヤコ、今日はこれを着て行け。」
ごそごそと彼が背中の後ろから、私に何かを差し出した。
色鮮やかな緋色の衣装で、私は驚いた。
Γ買ってくれたの?」
Γお前祭の初日に、欲しがってたろ?」
そうだ。行き交う人々が、祭の晴れ着に身を包んでいて場違いな気持ちで、私も着ていたらって、羨ましげに見ていたんだっけ。
Γ……ありがと、凄く嬉しい。」
金糸で刺繍が施されて、前開きでチャイナドレスと着物を合わせたような衣装だった。派手だが、決して下品でもなく安っぽくもない。丁寧に仕立てられたのが窺える。
Γお前には、こういう色も似合う。」
まるで自分の全てを知っているような口ぶりに、かあっと顔が熱くなる。
知らず、距離を空けようと前に体を傾けたら、後ろに引っ付いたルーも付いてくる。
Γなあ、ミヤコ。お礼は?」
Γな、なあに?」
ドキドキしながら振り向くと、腕を緩めたルーがにやりと笑う。
Γ贈り物をした俺に、御礼は?」
二度目なので、彼の言わんとすることは、さすがにわかった。
言葉ではない。
体をひねり彼に向かい合うと、ルーは自らの頬を差し出した。
Γ…………」
頬へのキスを求めて、そっと目を閉じる彼の長い睫毛を見る。
それから微かに笑む口元に、ふと思った。
この人は、いつからこんな風に安らいだ表情をするようになったんだろう。
出会った頃は、笑っていても冷たさを湛えていたルー。
頬に優しく触れてみる。触れた手に、自らの頬を押し付けるようにするのを見たら、愛しい気持ちが沸き上がった。
頬を通りすぎ、私はルーの唇にキスをした。初めて私からした。
直ぐに唇を離すと、ルーが目を見開いて驚いて私を見つめていた。視線を逸らす前に、嬉しそうな表情のルーの顔が再び近付く。
Γ……ミヤコ」
委ねる気持ちで目を閉じると、とても優しいキスが落ちた。
私の髪に手を差し入れて、額や頬にもキスをし、物足りないのか次第に熱を帯びるルーの唇を私は受け止める。
周りが見えてない自覚はあった。私は本当は怖くて、考えないようにしていたのかもしれない。今は、優しい恋に浸っていたかった。
ルーとは、魔法使いとは、ずっと共に在ることなんて、できないのに。好きになればなるほど、その壁に向き合わなくてはならないのに。
その時の私は、とても愚かで悲しい女だった。
もうすぐ山




