祭の最中6
私とルーは領主の館で夕食を食べた後、ルーの買ったお菓子を部屋で食べていた。
Γ美味しいね。ドーナツみたい。」
Γドーナツ?」
砂糖がまぶしてある揚げ菓子は、香ばしくてどこか懐かしい。二つも頂いちゃったし、夜に食べると太るけれど、たまにはいいよね。
Γお前にあんな特技があるとはな。食いしん坊と泣き虫だけではなかったのだな。」
面白そうに私を見ながら、ルーは瓶からちびちびと飲み物を飲んでいる。
Γうう、失礼ね。それはそうとルー、あのお金はどうしたの?」
チェストの上に無造作に積まれた袋を見て聞いた。
Γ賭けで儲けた。」
Γ賭け?ギャンブルってことね。なるほど…」
妙に納得。でもいいのかな、魔法使いがギャンブルしたら最強じゃないの。
Γ明日は祭で、好きな物を買えるな。」
Γう、ん…」
Γどうした?」
菓子を食べ終わり、指をタオルで拭きつつ、ためらいながら言ってみる。
Γ明日、どういう格好して行こうかなって……。昨日今日、私達結構目立ってたから、明日は気付く人もいるかもしれないし……」
Γ別に放っておけばいい。」
Γで、でも、私達を魔法使いの…」
顔を赤くして俯くと、ほんの少し静寂が下りた。
Γ………嫌か?」
ルーが、ぽつりと言った。
Γえ?」
Γ魔法使いの夫婦だと周りに見られるのが、嫌か?」
Γそんな、こと……」
何て言ったらいいか、上手く言葉が出ない代わりに頬が更に熱くなった。
Γミヤコ、俺は…」
Γそれ何飲んでるの?」
ルーの真剣な声に、私は誤魔化すように彼の飲みかけの瓶を持った。
Γす、少し飲んでみていい?」
琥珀色の飲み物を、了解も得ずに口に含んだ。
Γあっ」
Γん?これは……」
ルーが目を見開いて椅子から立ち上がる。
Γバカ、これは酒だ!」
かあっと喉が熱くなり、直ぐに頭がぐらぐらとして目が回ったようになる。
Γあ、れえ?」
ふらっと椅子から転げる私の腕をルーが掴む。
おかげで頭を打つのは回避したが、足に力が入らず床に座り込んだ。
Γおい、ミヤコ、しっかりしろ。かなり度数が高い酒だ。人間にはきついはずだ。大丈夫か?」
机を回ってきて、ルーが背中を支えてくれるが、私はふにゃふにゃになって、彼の胸にもたれることしかできない。
Γだい、じょぶよお、ふへ」
へらへらと笑う私に、ルーが苦い顔をした。
Γダメだな、これは。」
次回、酔っぱらいの誘惑




