時期:『2-2 エンドウォール編』の後。 『支援魔術師のため息』
ラスセ・フラノアグは魔法を使える。
特に支援魔法を使いこなす魔術師だ。
まだ日が真上に昇ってきてない頃。
ラスセ・フラノアグは森のど真ん中ーーー野営拠点ーーーに移動転移していた。
目的はたった一つ。
置いてきた馬車に戻り、仕事場まで移動するのだ。
そこで新たな送迎の仕事が来るのを待つ。
暇だったら、本を読んで気長く過ごすのだ。
それが、今のラスセ・フラノアグの日常である。
「今頃は検問所を突破しているでしょうね・・・・」
送迎の仕事で出会った2人を思い出しながら、手縄を操り、馬車を動かしていく
*
道中に魔物に出くわしたが、護身用の火魔法で撃退する。
相手の数が少なかったことが勝因だ。
約一日掛かって、ザロンさんが運営している野営拠点に着く。
いつものように馬場に馬を連れて行き、念入りに手入れをする。
馬房で最後の仕事を終わり、外で欠伸をしていると。
「よう。戻ってきたのか」
背後から快活な声が飛んできた。
ある程度予想はしていたが、直接見て、『答え』が当たった事に落胆する。
五十代過ぎの現役上級冒険者、ザロンさんだった。
「おいおい。そんなに嫌がるなよ」
「前に、この私を酒飲みに無理矢理誘ったのはどなたでしたか?」
ラスセの言い返しに、言葉が詰まるザロンさん。
上級冒険者は頭を搔きながら。
「あの事は悪かったよ。ところで、お前さん宛てに手紙が来ているぞ。ほれ、受け取れ」
彼から差し出された手紙を戦々恐々と摘まみ、丁寧に開ける。
その内容は、ラセグにとってよく知る人物による綺麗な文章で書かれていた。
「あ。師匠からだ。えーと。『エンドウォールに滞在する、バルド・ブールアを探し、彼を支援するように。これはエンド・ウォールの長、<マサリ>様からの依頼でもある』。・・・・・ちょっと師匠に文句を言いに行きます」
「まぁまぁ。落ち着け。折角の仕事だ。ここは大人しく従った方が良いじゃねぇか?」
「うぐっ・・・・・」
ラスセは深く考え込む。
確かにザロンさんの言う通り、まだ二度も来ないだろうチャンスだ。
それにバルド・ブールアならば安全だろう。少なくともあの世話焼きは滅多に見かけない。
冒険者。それは社会除外者が集まる、不安な職業だ。だが、魔物と戦う場合もある。己の魔法と参謀を世に知らしめるには少しは向いているかもしれない。
「分かりました。馬などはお願いできますか?」
「ああ。任せろ。だから、安心して行ってこい」
ザロンさんが自信を持って頷く。
*
翌日の早朝に、ラスセは【エンド・ウォール】を目指して出発した。