青いとり
おおきなそらを、捕まえた。
そらの裏には、だいちがぴったりとはり付いていたけど、
よけいだから、ぼくははがしてゴミ箱に捨ててしまった。
それからそらは、とり籠に入れてだいじに飼っている。
そらは、ふしぎな生き物だ。
なんにも食べないし飲まないし、どんな音も発しない。
ただ、まわるだけ。ゆっくり、ぐぅるぐぅる、と、うごくだけ。
ながく飼っていれば、どんな生き物なのか、だんだんと分かってくる。
そらは、きまぐれな生き物だ。
機嫌がいいときは突き抜けて青いけど、わるいときは、くさくさした灰色だ。
ある日には、ひとときに青いのに灰色だったりして、むずかしい。
その灰色も、白にちかかったり、黒にちかかったりするから、分からない。
籠から取り出して見つめたら、まぶしいくらいに赤く火照ったりするし、
ねるときは、こわいくらいにまっ黒だ。
気持ちはまるで、カメレオンを飼っているよう。
でも、カメレオンと違うのは、にんげんみたく泣くところだ。
そらは、にんげんみたく、涙をながす。
だいたいは灰色のときだけど、たまに青いときにもながす。
うれし涙なのかも知れない。
ある日、そらが灰色になって、涙がとまらなくなった。
あんまりにもしくしく泣くものだから、なんだか可哀想になってしまった。
だから、そらをぼくは、とり籠からそとに出してやった。
涙はやんで、そらはぶわっとおおきく、とじていたつばさを目一杯にひらいた。
つばさは果しなくひらきつづけ、海よりもひろく、ながれ星よりもながくなった。
そしてそらは、おおぶりにはばたきながら、元いたところへ向いとびたっていった。
とり籠には、たまごが一個、ころがっていた。
ちいさなたまごが、のこっていた。