肆・果たし状
それは突然現れた。
「ロッテ高校2年B組、ネル ネルネでござるな」
帰宅途中、ネルの目の前に突然男が現れた。その口調と左腕に紅くはためく腕章。もしかしなくとも生徒会の向田シリアルだ。
「生徒会の者が何の用だ」
低い声で、威圧する様に尋ねる。
そこらの不良なら縮み上がる様な迫力だが、流石生徒会。伊達に異端児を潰してはいない。
「何って……こういうことだ!!」
シリアルはけたたましく吼えると、筒状になった紙をネルに向かって投げつけた。
爆弾か何かだと思ったネルは何とか回避しようと試みる。
が、シリアルの方が何枚か上手だった。
よく鍛えられた、しかし細いその腕で投げられた筒状の紙は、ネルの右肩に直撃し、重力に則って地面へ落ちる。
「くっ!」
(ポイフルさんごめんなさい___)
死を覚悟したネルは心の中でポイフルに謝った。彼が仲間が傷つくことで何より悲しむことをネルは知っていた。
しかし、いつまでたっても何も起こらない。怪しんで地面に転がった筒状の紙を拾う。その瞬間___
「さらば!!」
と、叫んだシリアルの姿は掻き消えた。
それと同時刻。
ネルと同じようにポイフルも帰路へとついていた。そこへ___
ドゴォンッ
「あいたたた……。ふへぁー……。だるぅー……はっ、これはフルーチェさんのためなんだ。あー、そう思うと興奮してきた」
突然の出来事にさっと身構えるポイフル。時間が経つにつれて、降ってきた女、もといマーブルの息は荒くなる。
「はあ、早く終わらせて次の支持を仰ごう。てことでほいっっと!」
一通りマーブルの過呼吸が収まったところで、マーブルは筒状になった紙をポイフルに投げつけた。ポイフルはそれをキャッチする。
「ホントはころっと殺っちゃいたいんだけどフルーチェさんに止められてるから我慢してあげてんの。フルーチェさんに感謝しなさいよ?」
と言うと、マーブルの姿はシリアルと同じように掻き消えた。
マーブルの姿が消えると、ポイフルは筒状の紙を広げた。そこにはこう書いてあった。
『果たし状
ロッテ高校2年B組六角ポイフル。
貴様に花園フルーチェより、決闘を申し込む。
今週の土曜日、早朝8時。コイケヤ河原にて待つ』
読み終わると、ポイフルはそれをビリビリと破り、丸めて持っていたビニール袋に入れた。ポイ捨て、ダメ、絶対。
とりあえず桔梗に報告しようと、ポイフルは携帯を操作し始めた。
「賽は投げられた」
「さあ、傍観しよう」