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ロッテ高校不良浪漫奇譚  作者: 藤山悠樹
VS生徒会編
4/11

参・覚悟

「んじゃー、これでHR終わっぞー。きりつれーさようならー」



やはり適当に手を抜く九十九。手を抜くから人気なのだが、襲からは「お父様に選ばれたのだ。怠惰は許さん!」と、よく絞られている。

だが、そんな襲も今はいない。生徒会の動向を探りに行っているのだ。

5時限目が終わった頃。一つの報せが桔梗の元に入った。

『生徒会が本格的に動き始めた』

そう聞いた桔梗の指示は素早く、なおかつ的確だった。

___とりあえず状況の把握が1番だ。あちらに誰がいるのか、人数はどのくらいか、本拠地はどこか、武器の有無を調べてこい。襲!___



___りょーかい、お嬢___



___できれば戦略も調べてこい___



___んな無茶ぶりな!?…まあ、やってくっけどな!んじゃ、いってきまーすっと___



___九十九、お前はポイフルにつけ。頼んだぞ___



___お嬢の頼みならしかたねえやっ、と。お嬢、安心して構えとけ___



___わかっているさ___



以上が、5時間目の終わりに話された内容である。



「あ、ポイフルー、ちょっと来い。あとネルもだ」



「?わかりました」



ポイフルとネルに声をかけるとすぐに多目的室へ歩みを進める九十九。それに静かについていくポイフルとネル。



「!」



多目的室の看板を見た途端表情が変わるネル。多目的室に呼ばれる、それは緊急事態を表しているからだ。



ガララッ



九十九が扉を開ける。しかし。



「あれ、使われてたか」



先客がいた。先客が普通の生徒ならよかったのだが_____



「どうかなさったでござるか?」


九十九に声をかけたのは生徒会の腕章をつけた向田シリアル。

運の悪いことに、その先客というのが生徒会だった。



「いやー、ちょっと多目的室使いたかったんだけど生徒会使ってるんだよね?」


「いえ、ここをお使いになりたいなら移動するでござるが…」


「あ、いや、大丈夫」


「そうでござるか…申し訳ない」


「それじゃあ頑張ってー」


「はい!」



九十九がガララと音を立てて扉を閉める。



「個室行くぞ」



そう言うと、九十九は踵を返し、階段を降りていった。

個室とは、教師と生徒が一対一で話す為の部屋。主にメンタルヘルスケアをしている。不良といえどまだまだ高校生。悩み事もあるのだ。まあ、使われることはほとんど無いのだが。



「おら、入れ」



本来ならば生徒と教師が一対一で話す場。それぞれ平均より背の高い3人が入れば必然的にぎゅうぎゅう詰めになる。



「先生、狭いです」


「しゃーねえだろ」


「こらネル、文句を言うな」


「申し訳ありません」


「先生より従順ってどういうこっちゃ」


「それで、何かあったんでしょう?」


「スルーかよ。…チッ。生徒会の奴らが本格的に動き出した」


「!」


「なっ…!?」



九十九の言葉にポイフルは顔をこわばらせ、ネルは興奮のあまり立ち上がった。もともとぎゅうぎゅうなのでネルが立ち上がると更に狭くなる。



「落ち着けネル」


「す、すみません。ですが…!」



ポイフルの声に多少は落ち着きを取り戻したのか座り直すネル。しかし口調にはまだ興奮が残っている。



「それで、詳しいことは?」


「詳しいことは襲が調べてくれてる。とりあえず俺が指示されたのはお前らの保護だ。それと、これは俺の独断なんだが……」


「なんです?」



ポイフルが促すと、九十九は間を置いてこう言った。



「今のうちに仲間を集めておけ」


「仲間?」


「ああ。仲間だ。誰でもいい。どんな奴でもいい。とにかくこの学校で仲間を増やせ。

生徒会といえど、学校が決めたことにゃ口出しできねえ。この学校は大半が生徒によって決められる。

ソイツらを味方につけろ。何せここは都内一を誇る不良校だ」


「誇っちゃいけませんよね」


「部長にもなりゃあそのへんのごろつき共ともやりあえる」



ネルの鋭利なツッコミを華麗にスルーし、九十九は続ける。



「ま、あくまでも俺の独断だから無視してくれて構わねぇ」


「じゃあ言うなよ」


「……お前ちょいちょい俺に失礼だよな」



ぼそりと小声で呟かれた言葉を逃さず、ツッコミを入れる九十九。



「ですが」



九十九とネルが騒いでいる中、ポイフルが口を開く。



「あちらが、こちらに危害を加える確証はないんでしょう?」



平和主義者のポイフルらしい言葉だ。なるべく戦闘はしたくないのだろう。だが、それは優しさではなく、甘さというものだ。ポイフルはとことん甘い。



「はぁー……」



九十九は長い溜息をついた後、話し始めた。




「馬鹿かお前は」



九十九が低い声で言う。半目ではあるものの、その眼鏡の奥にある瞳は、肉食動物が獲物を狩るときのそれと同じように、爛々と輝いていた。その迫力の凄まじさにポイフルとネルは畏怖の念を抱く。



「確証はねえだ?逆に、奴らが危害を加えねえ確証はあんのか?

アイツらが仕掛けてくる可能性の方がよっぽどたけえだろ。

関係ねえ奴を巻き込みたくねえっつー理由なら甘過ぎるにも程がある。

そんなんじゃ守れるもんも守れねえ。

弟を守りてえんだろ?

恋人を守りてえんだろ?

なら覚悟をしろ。

巻き込みたくねえだとか、んなあまっちょろいこと考えてんじゃねえ

1度俺が根性叩き直してやろうか?ああ?」



(これが、極道__)



背筋がぞっとした。

裏社会の片鱗を、のぞき見た気がした。



「は、い…」


「わかったらとっとと帰りやがれ!!」


「はっはい!!」



こうしてふたりはやっと帰路へついたのだった。














「物語の加速に巻き込まれた者達」


「それが吉と出るか凶と出るか」

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