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ロッテ高校不良浪漫奇譚  作者: 藤山悠樹
VS生徒会編
10/11

捌・決戦

天下の週末。


コイケヤ河原。



「来てくれたんだね」



「ああ」



向き合う、白と黒。

その後ろに控えるは、忠誠を誓った者、友の為に戦う者、復讐の為に戦う者。

目的は違えど、目標は同じ。

そんな者達が、集いに集った。

風が、集いし者達の肌を撫でた。

くすぐったそうにフルーチェが目を細めた。

鬱陶しそうにポイフルが眉を顰めた。



「それじゃあ始めようか」




パアンッ



フルーチェがそう言った途端、どこからか蹴りが飛んできた。咄嗟に腕で防ぐフルーチェ。それを合図にポイフル達は事前に決めておいた相手に向かって走っていった。フルーチェに対抗するのは___



「っ、おや、いつぞやの……!」



蹴りの主は小唄だった。



「不満かな?」


「大いにね」



軽やかに着地し、小唄がニヤリと笑うと、フルーチェもにこりと笑った。



「まあ、こっちも頼まれたんでね」



小唄がギラリと目を輝かせながら言う。すぐさまフルーチェの懐に入り込み、拳を打ち込む。



「ふーん…」



興味なさそうにそう言いながら、小唄の後ろに回り込み、拳を避ける。



「俺もいるぞ!」



いつの間にかすぐ近くにいたネルが拳を繰り出す。その手を長い脚で薙ぐ。



「……ちぃっ……」



フルーチェがそう舌打ちすると、小唄とネルは満足げにニヤリと笑ったのであった。


フルーチェ対小唄&ネル、始___











「ポイフルぅぅぅ!!」


「くっ、」



一方、その頃ポイフルはアポロの猛攻に晒されていた。攻勢に転じようにもアポロの蹴りは鋭く、防戦一方だ。

ポイフルはかつてアポロと戦ったときのことを思い出した。

(確か奴は蹴りが得意。それさえ耐え切れば…)



ダァンッ



「くっ」



ポイフルの脇腹にアポロの足がくい込んだ。昔戦ったときより、はるかに腕を上げている。いや、それだけではない。アポロはポイフルを倒すためだけに、1年間鍛えてきた。それに対しポイフルは平和主義者なため、映画研究部を抜けてからは喧嘩という喧嘩をしていない。弟を叱る時に拳骨を落とすくらいだ。たまに吹っかけられる喧嘩も新しくこの町に来た新参者のため弱いし、大体はネルのサイズにビビって逃げ出してしまう。

しかし、ポイフルのその実力とセンスは確かなものである。ポイフルは脇腹に入ったアポロの足を掴んで引き寄せ、自身の足を振り上げた。



ガンッ



「うっ」



ポイフルの足はアポロの顎に入った。ポイフルは常日頃から母親からの虐待を受けているため、打たれ強いのだ。なぜ虐待を受けているかはまた後ほど語ることにしよう。

アポロは顎を抑え、よろよろと後ずさる。

しばらく喧嘩をしていないとは言え、喧嘩上級者であることには変わりないのだ。その一発は重く、鋭い。ポイフルのカウンターは余程強くない限り避けるのは難しいだろう。更に、一度カウンターが決まればもうポイフルのペースだ。ポイフルはカウンターが入った途端、攻撃特化の戦士となるのだ。



(あとはこのまま__)



「ぐあっ」



次々に連撃を繰り出すポイフル。それを防ぐ術もなく受け続けるアポロ。

それが続くと思われた、が___



「っ!?」



躱された。アポロの実力では躱すことはできないと思っていたポイフルは、当然困惑する。

それもそうだ。アポロはかつてポイフルと戦ったときよりはるかに腕を上げているのだ。また、ポイフルは平和主義。ポイフルが知らないのも無理はない。



(くそっ、侮ったか!)



動揺したことでできた一瞬の隙を突いてアポロが連撃を繰り出してくる。それを持ち前の反射神経と喧嘩のセンスで防ぐポイフル。しかし、それもいつまで続くか。

チラリとアポロの背中越しにフルーチェ達の方を盗み見る。



(まだいけるか……)



ポイフルはまた、アポロの連撃を防ぐことに集中し始めた。




アポロ対ポイフル、続___














「チッ、お前かよ…」


「おやおや、口が悪いぜ、お嬢ちゃん」



襲は背後に戦闘の音を聞きながら、マーブルと対峙していた。余裕そうに見せつつ、俯き何か(フルーチェへの愛)を呟いている相手のことを探る。


(得物は特になし…か?)



「早く私はフルーチェさんのところに行きたいのに…。とっとと終わらせてフルーチェさんのところに行こ」



呟いている声が突如止んだ。何事かと襲は自分のエモノにひっそりと手を伸ばす。戦闘準備は万端だ。

更に神経を尖らせると、息を吸い込む音が聞こえた。それ以外の音は彼女からは聞こえない。それでも警戒を緩めることなく、マーブルを観察し続ける。

どれほどそうしていただろうか。


(このままじゃ埒が明かねえ!)


いつまで経っても行動を起こさないマーブルにしびれを切らした襲は短いスカートの中から愛刀の代わりである木刀を取り出し、切りかかった______



マーブル対襲、始___








日本刀を腰に下げ、シリアルは目の前の女、もとい桔梗を睨んだ。相変わらずわけのわからない余裕そうな笑みを浮かべている。



「こちらもそろそろ始めないでござるか?」


「そうだな」



より一層桔梗が笑みを深めると、2人は同時にそれぞれの刀へ手をかけ、腰を低く落とした。抜刀術の構えだ。

どちらからともなく、2人は駆け出した。



リィィィ!!!



一つの刀が弾け飛んだ。

互いの手が痺れる。

空になった手を見つめたのは___




桔梗だった。



「勝負あり、でござるな」



無防備にこちらに背を向けて立っている桔梗に、声をかける。

彼女の愛刀は彼女から遠く離れたところにある。シリアルは彼女が刀にたどり着くよりも早く、彼女を斬ることができるだろう。

桔梗に、勝機は無くなった。

それを確認し、ポイフル達が戦っているところへ行こうとした時



「おいおい、誰が終わりだと言った?」



桔梗が挑発するように、声を発した。

素手と刀では明らかに刀の方が有利。ましてや桔梗は女だ。力でシリアルに勝てるわけがない。

シリアルがそう思案していると、突然叫び声があがった。桔梗だ。



「我が左手に封じられし魔王よ!今その封印を解く!!この私に、力を寄越せ!!!」



厨二病炸裂である。

それに対しシリアルは……



「何!?魔王!?!?」



桔梗の厨二病なセリフを信じてしまった。

完全に信じ切っているシリアルは再び愛刀を構え直す。シリアルは実はアホの子なのである。



(彼女の左手の魔王を倒すことが先決か…)



そう考えたアホの子シリアルは桔梗に向かって駆けていく。狙いは左手。あともう少しで届く、その瞬間__



「ぐあっ!」



ドシャリと音を立てて地面に投げ出され、悲鳴をあげたのは、シリアルの方だった。



シリアル対桔梗、続___

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