世界破滅後のゲーム
斜志野 九星という者です。短編小説を投稿するのは今回が初めてになります。今回は高校の後輩から頂いた『インターネット』『飛行機』『黄金の槍』の3つのお題を使って小説を書きました。
文章がおかしいところ、誤字・脱字、こうしたら良いというところありましたら、コメントお願いします。
世界中のありとあらゆる核兵器が使われ、生物兵器禁止条約に抵触しない巨大生物兵器が大地を蹂躙し、情を持たない自動兵器が破壊の限りを尽くした、第三次世界大戦の終結からもう何年も経とうとしている時……
俺はゲームをしていた。
「うおおおおおおおおおおおおおおお!!」
手に持った光の剣を構え突撃する。
相対するのは、巨大な蠍そのまんまな姿をした怪物『デスコーピウス』。
ギシャァァァァァァァァァァ!!
『デスコーピウス』の鋏が、突撃する俺のすぐ前の地面を抉った。
「うわああああああああああ!!」
案の定、俺はぶっ飛ばされる。
ドスッ!
そして、当然の如く地面に落ちる。
今のでHPの4分の3を持ってかれてしまった。
「シュン、大丈夫か?」
俺と同じく光の剣を携えた男子がこちらに向かってきた。
「大丈夫じゃない。結構やばい」
俺は自分のHPゲージを確認しながら言った。
「無理に突撃するんじゃないわよ。ちゃんと作戦を考えましょう」
もう一人、やはり光の剣を持った女子が俺に向かって喋った。
「分かった分かった。ロッド、リン。作戦考えよう」
俺は起き上がり、2人と相談し始めた。
しかし、ゲームと言っても進歩した物だ。
今、俺がやっているゲーム『ドローンガーディアン』は、臨場感が半端ない。
何しろ、武器はちゃんと手で持つ事ができ、走る動作をするときはちゃんと足を動かし、武器を振るう動作をするときはちゃんと手を動かせる。
衝撃もかなり軽減されるものの、戦っている実感がつかめる。
何よりも一番の魅力は、広い世界の中で存分に動くことができるというものだ。
以前流行っていた『フロントライン・オブ・ザ・シェルター』というゲームは、ただただたくさんの砲を操作するだけという作業ゲーだったからというのもあるが、やはりこの解放感は良い。
更にインターネットを通じて、世界中の人とも協力プレイができるというのもありがたい。
言語は自動翻訳されるので、言語の壁を越えた友達を作ることができる。
今、一緒に戦っているロッドとリンも外国人だ。
「どうする?『デスコーピウス』討伐は諦めて、クエスト達成を優先しようか」
リンが俺たちに提案してきた。
クエストというのは、1プレイ内に出される課題のようなものだ。
今回、俺たちに出されているクエストは、世界的に貴重な『黄金の槍』を回収せよ、というもの。
物を回収するという簡単なクエストかと思いきや、討伐が困難な『デスコーピウス』に遭遇してしまった。
「いや、それだとクエスト達成後の報酬が下がってしまう。それは避けたい」
「でも、このままだと達成できないよ……」
ギシャァァァァァァァァ!!
『デスコーピウス』がこちらに向かってきていた。
「やばい。一旦、逃げるぞ!」
俺は2人に言って、逃げ出した。
2人も俺の後に続く。
次の瞬間、今まで俺たちが話し合った場所で、
バァァァァァン!!!
と、爆発音がした。
「『デスコーピウス』の爆発針! 『ドローン』を破壊されないように気をつけろ!」
『ドローン』とは、『ドローンガーディアン』の名前の由来でもある小型の機械の事。プレイヤー一人一人につくお供のような存在。
『ドローン』が破壊されると、その『ドローン』に対応するプレイヤーはゲームオーバーとなる。
俺たちは、その『ドローン』を守りながら戦わなければならないため、『ドローンガーディアン』というゲーム名なのだ。
バァァァァァァン!!
バァァァァァン!!
バァァァァァァァン!!
爆発針が連射されている音が聞こえる。
『デスコーピウス』の針のリロードに時間がかかるだけ少し救いはあるが、このままでは危険だ。
ギシャァァァァァァァァァ!!
「どうする? クエスト達成から更に遠のいた気がするんだけど?」
「もう少し走れ。いいポイントがある」
「いいポイント?」
「ああ。もうすぐ、見えてくる」
しばらくすると、飛行機の残骸がいくつもある場所に辿り着いた。
「あそこの飛行機の残骸の裏に隠れよう」
「隠れる!? 『デスコーピウス』はそのまま突進してきそうだけど……」
「いったい、どういうつもりだ?」
ロッドは奥にある飛行機の残骸を指差して言ったが、俺とリンにはロッドの意図が分からない。
「まあ、見てろ」
とりあえず、ロッドの言うとおりにして俺たちは飛行機の残骸に隠れた。
ギシャァァァァァァァァ!!
ガシャン! ドシャン!
聞こえてくる音からすると、『デスコーピウス』は飛行機の残骸を踏みつぶしながら来ている。
ギシャァ……
ドギャァァァァァァァァァァァァァン!!!!
『デスコーピウス』の鳴き声を遮って爆発音が聞こえてきた。
閃光が辺りを白に染める。
「何だ……今のは?」
「核爆弾の不発弾だ」
「不発弾?」
「ああ。ここの飛行機は都市に核爆弾を運ぶ途中で撃ち落とされた飛行機たちだ。当然、核爆弾は積みっぱなしでな」
ロッドが丁寧に説明してくれた。
「さて、後は『黄金の槍』だ。シュン、リン、取りに行こう」
その後、俺たちは無事、『黄金の槍』を手に入れ報酬をたくさんもらった。
世界破滅と呼ぶべき第三次世界大戦の後に楽しくゲームなんてできるわけがない。
人類は、各々のシェルターに隠れ、核に冒された身体を機械に治療してもらっている。
俺たちは眠らされた状態で、ベッドの上に横たわっている。
生活空間として与えられた場所は、インターネットを脳内に投影してできた仮想世界。
そこで、世界中のあらゆる人とつながり、自分たちの状況を慰めたりしている。
だが、仮想世界では動くことができない。
話すことはできても、動くことができないのだ。
自由に動ける世界を知っている俺たちに所詮脳内で作り出されているだけの仮想世界では満足できなかった。
それを見かねたインターネットの管理人―核攻撃を事前に知っていた政府高官たち―は、俺たちに娯楽としてシェルターの防衛兵器のコントロールを一部解放した。
それが、『フロントライン・オブ・ザ・シェルター』の実態。
だが、あくまで巨大生物兵器や自動兵器を倒すだけで動くことはできなかった。
インターネットの管理人は、俺たちを満足させるために物理干渉可能な立体映像を開発した。
立体映像ならば、核に汚染されることもなく、シェルターの外の世界を自由に動くことができる。
それを遠距離からコントロールできる機械に搭載し、俺たちに提供した。
それこそが『ドローン』であり、俺たちが『ドローンガーディアン』で『ドローン』を守らなければならないのは、ゲームを続けるため……
報酬の内容は、ネット容量の増量と治療の加速。
しかし、そのゲームとは遊戯という意味ではない。
インターネットの管理人が、俺たちの心を癒すためだけにこんな大がかりな機械を作ることはない。
彼らは、巨大生物兵器や自動兵器が支配する世界を再び人間の世界にするために、俺たちを利用しているだけに過ぎないのだ。
このゲームは、人々が巨大生物兵器と自動兵器相手に行う、自分たちの世界を賭けた博打なのだ。