第四話 スコーピオンとの遭遇
四話目です。今回は戦闘シーンです。
「これから15人の護衛でどうやって森を越えるか話し合いたいと思う」
王都へ辿り着くためには、後半分ある森を越えなければならない。この森は王都の近くにあるが、決して油断出来ない魔物達が多数生息しているのだ。
「私達の目的はあくまで何があっても、姫様を無事に王都まで送り届ける事です。私達は姫様の安全を第一に考えるべきです!!」
アリシアが強く主張する。だが現実に我々には15人の護衛しかいない。しかも、そのうちの5人は怪我が完全には治っておらず、戦える状態では無い。そう悩んでいると、騎士達のリーダーが突然立ち上がって言った。
「私は皇女様をサラディール殿にお任せするべきだと考える。この中での最大戦力であるサラディール殿のそばにいれば、皇女様も安全でしょう。」
「うむ。レイの隣にいれば、私も安心だな。」
シルヴィーも続けて言う。全員がその意見に賛成のようなので、俺がシルヴィーの護衛につく事になった。馬車が壊れているので、移動は当然歩きで、前方に2人側方には3人ずつ、後ろに2人を配置し、真ん中に怪我をしている騎士達とシルヴィーとアリシアと俺が入る。魔物がどの方向から来ても、シルヴィーと接触しないようにするためだ。この陣形で進むこと1時間、俺達は魔物と遭遇しながらもその全てを騎士達の活躍と俺のファイヤーボールで切り抜けて来たが、神経を使う索敵に魔物との戦闘で体力を奪われていた。そしてそんな俺達にさらなる脅威が襲いかかる。
「なんだ!?あの魔物は!!さっきまでとは違うぞ!!」
見張り要員の騎士がさけぶ。見た限り体長は15メートル程で、ハサミを持ち、棘のある尻尾を持つサソリを大きくしたような魔物である。
「こっこいつはッッ!!Bランクの魔物、スコーピオンだ!!」
ざわめきが起こる。スコーピオンは普通20人程度のチームを組んで戦うものなのだ。それが疲労困憊である今の俺達の目の前に現れたのだから当然である。
「俺が戦る。みんなは安全な所で待っててくれ。」
そう言って俺は前に出る。ここでは森に燃え移る可能性があるから、火属性の魔法が使えない。だが、それならそれで戦い方がある!!
「待て!!レイ!!1人でかなう相手ではないだろう!!」
シルヴィーが止めにくる。アリシアも心配そうに見つめてくる。しかし俺が片付けなければならないのだ。
「大丈夫さ。シルヴィー。俺を信じろ。必ず生きて戻ってくる。」
俺はシルヴィーに諭すように言う。するとシルヴィーは俺の手を取り、言った。
「約束だ!!絶対にもどって来い!!死んだらこの私が許さないからな!!」
「ああ。分かっている。じゃあ、行ってくる。」
俺は体中の魔力を脚に集め、爆発させスコーピオンに正面から突っ込んで行く。
「バカッッ!!正面から行ってはダメだ!!」
シルヴィーの声が聞こえる。俺はそれには構わず、腰に刺している刀を抜いた。ガキーーーン!!音を立てて俺の刀がスコーピオンの殻に弾かれる。そこで生じた隙を逃さずスコーピオンのハサミが襲い掛かってくる。俺は横に転がってその攻撃を避け、再び刀を構える。
「堅い殻だな。刀が弾かれた。」
思わず愚痴が出る。しかし俺が持っているのは刀だ。叩き斬る武器である剣だったら斬れないだろうが、刀は斬る事に特化した武器だ。幾ら堅くても技術があれば、斬れぬものは無い!!俺は再びスコーピオンの正面から突っ込み、全力の一撃を奴に叩き込む。ガキーーーーーん!!!先程よりも大きい音を立てて刀と奴の殻がぶつかり合う。
「ここだ!!」
その掛け声とともに俺は刀を少しずつ引いていく。ちょうど料理人が刺身を切り分けるようなイメージだ。ピシッッ!!殻が割れる音が響く。
「トドメだ!!魔剣技 初の型 空蝉!!」
空蝉は刀身に魔力を通す事で、刀の切れ味を格段に上げる技だ。ズッッバーーーーーーン!!音を立ててスコーピオンが真っ二つに割れた。
「なっっ!?あのスコーピオンが真っ二つに!?」
後ろの奴らが驚いている。俺は刀を納め、シルヴィーのもとへ向かった。
「ほら、無傷で帰って来たぞ。」
「馬鹿者!!すごく心配したんだぞッッ!!」
シルヴィーは泣き出してしまった。俺は申し訳なくなって泣き止むまでシルヴィーを抱き締めていた。
読んで頂きありがとうございます。次回の投稿はおそらく、2日か3日後になるかと思います。読んで下さったら嬉しいです。