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偽物の世界で  作者: ten
1/4

開始

 GMは言った。


「今から、このゲームはデスゲームになります」


 七月三十一日、午後六時

 この日、僕たちはゲームの世界に閉じ込められた。


 皆がざわつく中、僕は一人、このゲームに参加することになった経緯を思い出していた。




 七月三十一日、午後十時

 僕は妹に起こされ、リビングで朝ご飯を食べていた。テレビ見ると、今日からサービスが開始されるVRMMORPGの宣伝が流れていた。


「沙希、このゲームやるんじゃなかった?」


 僕は箸を置くと、妹の沙希に訊ねた。沙希はにっこりと笑って答えた。


「そうですよ。今日の五時からサービス開始です。ですから兄さんもちゃんと準備しておいてくださいね」


「え、僕このゲーム買ってないんだけど……」


「大丈夫です。兄さんの分は私と麻耶さんでお金を出しあって、買いました。もう兄さんのヘッドギアにインストール済みです」


 沙希はそう言うと朝食の後片付けを始めた。

 まさか僕の分まで買っていてくれているとは、思わなかった。麻耶にも礼を言っておこう。

 僕は携帯をポケットから取り出し、麻耶に電話を掛けた。何回かコール音が鳴り、麻耶が電話にでた。


「もしもし、祐希?どうしたの?」


「いや、ちょっと御礼を言っておこうと思ってさ。僕の分のゲームも買ってくれたって聞いたからさ。ありがとうね」


「いいわよ、別に。幼馴染なんだし、いつも迷惑かけてるし、その御礼だと思っておいて」


「わかった、ありがとう。次に話すのはゲームの中だね」


「そだね。じゃ、また」


 僕は電話を机に置いた。そして、いつの間に片付けを終え、テレビを見ている沙希に、ゲームの礼を言った。


 その後、昼食を食べたり、リビングで沙希にゲームのことを聞いたりしているうちに、サービス開始十分前になった。僕は部屋に戻りヘッドギアを装着して、その時が来るのを待った。

 ゲームが始まると、僕はまず、キャラクターの作成をした。三十分ほどかけ、長身でイケメンなキャラを作りニヤニヤしていると、強制的に画面が移り変わり、広間の様な所に移動させられた。周リを見渡すと、みんな僕と同じくプレイヤーの様で、首を動かしてきょろきょろとしている。

 チリン、と僕の頭の中で音が鳴った。次の瞬間、目の前にステータスウィンドウの様なものが出てきた。メールが来ているようだ。開いてみると沙希からだった。内容はどこにいるのかというもので、僕は適当に目立つ店の名前を入力し、そこで会おうという様な事を書き、返信した。

 五分後、その店で待っていると沙希らしき人物が声を掛けてきた。


「兄さん、ですよね?」


「そうだよ、よくわかったね」


 僕がそう応えると、沙希は「妹ですから」言って、安心したように笑みを浮かべ、握手を求めてきた。

 なぜ握手なんだろう…… 僕が首を捻っていると、沙希は言った。


「フレンド登録をするためには、握手する必要があるんですよ」


 そういえばそうだったと思い、僕は沙希と握手をした。

 すると、サキとフレンド登録しますか?というメッセージが出た。僕は迷うことなくYESをタッチした。チリン、という音が鳴り、サキとフレンドになりました。というメッセージが出たのを確認すると、僕は沙希に訊ねた。


「そういえば、麻耶は一緒じゃないの?」


 沙希は答える。


「メールをしたら、後で会おう、という風に仰っていましたよ。イベントの終わった後にでももう一回メ

 ールしてみましょう」


 そう言った後、沙希は「それはさておき」と言って続ける。


「兄さん、その姿は一体何ですか。どうしてもっとかわいらしい姿にしなかったんですか。そんなに大きかったらきちんと抱きしられないじゃないですか」


 僕は、沙希のとんでもない発言を聞くと、ぶっきらぼうに答えた。


「別に良いじゃないか。ゲームの中でくらい理想の自分の姿になったって。それより沙希の格好のほうが問題だよ。髪と目の色変えただけじゃないか」


 僕がそう言うと、沙希は苦々しい顔をした後、わざとらしく声を出した


「あー! もうこんな時間ですよ、イベントが始まってしまいます。広場に行きましょう」


 僕は沙希に手を取られ中央広場に向かった。



 広場にはもう既にかなりの人数が集まっていた。皆一様に、ワクワクとした面持ちだ。

 六時になり、大きなファンファーレが鳴った。


「これより Imitation World Online の最初のイベントを行います」


 アナウンスが流れると、広場のプレイヤー全員の歓喜の声が聞こえてきた。僕も興奮気味になっている。

 不意に、世界が暗くなり、空に一人の男の姿が浮かび上がった。男は言った。


「みなさん Imitation World Online へようこそ。私はGMです。名前は特にありません。早速ですが、皆さんに一つお知らせがあります」


 男はそこで言葉を止めると、唇を歪めた。そして一言。


「今から、このゲームはデスゲームになります」




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