繁栄の代償4
怪獣、それは突然世界各地に現れた巨大生物たちの総称である。彼らは凄まじい力を用いて、世界各地で破壊の限りを尽くしていた。彼らと対峙した人類側は自らの国を守ろうとあらゆる手段を用いたが、怪獣をこの地球上から消滅させることが出来ずにいた。
人類側も怪獣に対抗すべく、怪獣を倒すための組織づくりを始めた。そして2年と言う歳月をかけて、『防衛連合』という組織が完成したのである。その組織は日本をはじめ、アメリカやイギリスと言った世界主要都市に基地を置いていた。その組織の中に、怪獣の調査及び撃退を目的とする部隊が出来た。これが、『怪獣迎撃班』の元の始まりである。
「しかし、発電所ですか……」近衛の話を聞いた如月が呟く。
「なぜ、発電所を狙うのかしら」雪野は近衛の話を聞いて分かる情報を、自分なりに整理しているようだ。
折笠はスクリーンに映っている情報や近衛の話を聞いて、自らに与えられていた情報を整理していた。怪獣にとって発電所が重要な意味を成しているのだろうか、それともただ発電所だけを狙っているだけなのか。どちらかが怪獣の行動する理由なのかを考えてはみたが、今の折笠にはその答えを見つけることはできなかった。
近衛は指令室にいる全ての隊員を見渡してから、凛とした表情で彼らに指示を出す。
「怪獣迎撃班に命じる。隊員は大笠市へ向かい、この事件の原因を解明せよ」
「了解」近衛の指示を聞いた全ての隊員が、モニターに映る近衛に向かって敬礼をする。
モニターの電源が消えると、葛城は椅子に座っている他の隊員の顔を一通り見る。そうして、彼は何かを心の中で決めると椅子から立ち上がる。
「如月、折笠、立花の三名は大笠市へ向かえ。雪野、奥村は指令室にて待機してくれ」
葛城の指示を聞いて他の隊員は敬礼をすると、すぐさまそれぞれの持ち場へと向かう。折笠は如月、立花と共に司令室のある区画から地下駐車場のある区画へと走り出す。駐車場にたどり着くと、黒色の車に乗り込む。車の運転席に如月が、助手席と後ろの座席に立花と折笠が座る。車のエンジンを作動させると、運転席にいた如月が後ろにいた折笠の方を向く。
「おい、新人。こっちの足を引っ張るなよ」
「僕は如月さんの足なんて引っ張る気はありませんから!!」
如月の売り言葉に買い言葉で答えた折笠の様子を見て、後ろの席に座っていた立花が笑う。その笑い声を聞いた二人は、すぐさま彼の方を向いた。視線を注がれた立花は苦笑いを浮かべていた。
「まぁまぁ、二人とも仲良くいこうぜ」
立花のその言葉を聞いて如月は何も言わず前を向くと、急スピードで車を走らせる。敷地内から出た車は3人の隊員を乗せ、大笠市へと向かうのであった。