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闘い、護る者  作者: 星 冥
繁栄の代償
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繁栄の代償3

 扉の先には、それなりに広い部屋があった。そして、そこには四人の隊員がいた。彼らは皆部屋の中央に設けられたテーブルの椅子に座っている。ある隊員は仏頂面でコーヒーを飲み、ある大柄な隊員は興味深そうに折笠を見ていた。

「みんな、新しい隊員が入ることになった」葛城はそう言うと、折笠に自己紹介をさせる。

「初めまして、折笠勇人です。本日付でこの部隊に配属されました」折笠は元気よく自己紹介をする。

折笠の自己紹介が終わると、先ほど仏頂面でコーヒーを飲んでいた若い隊員が立ち上がった。彼は折笠より年上で、所属している年数も長いように見えた。

「副隊長の如月征四郎だ。よろしく頼む」

如月は無愛想な表情を浮かべながらそう言って、握手を求めてきた。折笠は最初は彼の表情を見て握手をするのを躊躇ったが、苦笑いを浮かべながら握手に応じる。折笠が如月の手を握った瞬間、如月はすぐさま彼の手首を捻り返した。突然の痛みに折笠は顔をゆがめ、その様子を見ている如月は口元をにやりと緩めた。

「油断してるからだ、馬鹿者」そう言う如月の目には、折笠に対する侮蔑が込められているように見えた。

折笠が手首を抑えていると、大声で笑いながら彼に近づいてくる隊員がいた。彼はこの部屋にいるどの隊員よりも大柄で、その姿は仁王像のように思えた。

「おいおい、大丈夫か新入りさんよ」男は折笠に歩み寄ると、彼の肩に掌を置く。

「俺は立花銀之助、この部隊で歩兵隊の隊長をさせてもらってる」

立花と名乗った男は、笑顔を浮かべながら折笠に握手を求める。折笠は彼の握手に応じようとするが、すぐさま彼の手を握ろうとはしなかった。彼のその様子を見て、椅子に座っていた二人の女性がくすくすと笑いだす。その笑い声を聞いて、折笠は彼女たちの方を向いた。折笠の視線を浴びた彼女たちは、突然見つめられたことに身体をびくっと震わせる。

「ごめんなさい、私は奥村楓。もう一人の子も紹介するわね」楓はそう言うと、俯いていた女性を折笠の前に突き出した。

折笠の前に突き出された女性は最初はもじもじと何もしゃべらずにいたが、しばらくしてか細い声で喋りだす。

「雪野瞳です。狙撃部隊で砲撃手をしています」

雪野と名乗った女性はそういうと、小さくお辞儀をすると椅子に座る。全員との顔合わせを終えたことを確認すると、葛城はいつも座っている椅子に座った。折笠も立花の隣の椅子に座ると、指令室を見渡した。指令室には様々な機械が置かれ、部屋の奥にはスクリーンが設けられていた。ここで普段、葛城たちは様々な打ち合わせをしていたのだろうかと頭の中で考え込んでいた。


 突如、指令室に警報音が鳴り響く。その警報音を聞いて、雪野がすぐさまテーブルに設置された端末でスクリーンを起動させた。起動したスクリーンを見ると、そこには眼鏡をかけたオールバックの男が映っていた。彼は指令室にいる全ての隊員の姿を確認すると、葛城に全員そろったな、と言った。葛城も、無事に折笠も合流しました、と男に伝えた。

男は折笠に視線を移すと、柔らかい笑みで微笑んだ。

「ようこそ、『怪獣迎撃班』へ。私も君を歓迎するよ」

男の言葉を聞いて、折笠はすぐに彼に対して敬礼をする。男も折笠に対して敬礼をすると、スクリーン上に日本地図を表示させた。地図をよく見てみると、ある個所が赤く点滅していた。

「今回、君達にはこの場所で調査をお願いしたい」

男はそう言うと、その場所の詳細なデータを表示させる。場所は日本支部のある場所から20キロ程離れたところにある。その街の名前は大笠市という。写真で街の大きさを見る限り、そんなに大きな街ではないようだ。

「近衛司令、この街でいったい何が起きているんですか?」

「最近、この街一体で発電所が相次いで破壊されている。発電所の損壊状況調査から、人的な被害ではなく怪獣による被害であることが確認されたそうだ」

近衛と呼ばれた男が『怪獣』と言う言葉を口にした時、折笠は自らの掌を握り締める。その様子からは、怪獣に対してなんらかの感情を抱いているように見えた。そんな彼の様子を、隣にいた立花が不思議そうに見ていた。

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