繁栄の代償2
「本日付で防衛連合日本支部に配属になりました、折笠勇人です!!」折笠は大きくはっきりと軍人に告げる。
「どうも、こんにちは。俺は葛城結城だ」葛城と名乗った軍人は彼と強く握手を交わす。
葛城は握手を終えると、折笠を連れて地下空間の中を案内し始めた。今彼らがいるところはエントランスであり、ここからは地下空間の主要な区画へと通じていると折笠は葛城から説明を受けた。折笠は彼の説明を聞きながら、彼の胸につけられた銀色のバッチに目をやった。そのバッチは、彼が折笠と同じ部隊に所属していることを示していた。
「そういえば、君は自分がどこに配属されたのか知っているのか?」
「はい、僕は『怪獣迎撃班』に配属されたと聞きました」
折笠の言葉を聞くと、葛城は嬉しそうな笑みを浮かべた。一方で、折笠の顔には不安が浮かんでいた。自分が新しい部隊への配属にされるというのもあったが、一番の原因は配属された理由だった。理由は、欠員の補充のためであった。聞くところによれば、先日の任務で『怪獣迎撃班』の隊員が殉職したらしい。死と隣り合わせの部隊に配属されるという一種の恐怖が、彼の表情の不安を生み出していた。
葛城はそんな折笠の顔を見ると、柔らかい笑顔を浮かべ、折笠に握手を求めてきた。突然の握手に戸惑いながらも折笠が握手に応じると、葛城は彼の肩に手を置いた。
「俺はそこで部隊長をさせてもらってる。安心しろ、死なせはしないさ」
葛城はそう言い終えると、にっこりとした笑みを浮かべながら地下空間内を案内する。その案内には、葛城の説明がついていたので折笠にとってはとても親切であった。同時に、彼から掛けられたその言葉によって、自分の中にあった不安が解消されていくのを感じた。
しばらく歩いていると、『指令室』と書かれた札のついた扉の前で立ち止まる。扉には葛城の胸につけられたバッチと同じ模様が刻まれていた。
「ここが、君の配属された部隊専用の指令室さ」葛城はそう言うと、扉を二回ノックする。ノックの後、扉が自動的に開く。二人は指令室へと踏み入れた。