三話 修行開始!
「さて、山に篭って早くも2時間が経過しましたがコボルトさん見つかりませーん!それにしても広い山ですなー、修行にはもって来い!てカンジです!いやー、しかし今日は暑い!春でまだ寒さが残っていてもいいのじ暑い!」
旅行のビデオを録画するがごとく一人で喋り続ける俺。まさに言葉通り暑い広い山の中で2時間ウロウロし続けてるのだ。正直イライラしてくる。
「っだー!なんで見つからないんだよ!2時間だぜぃっ!?」
「フフ、そんなに焦っても何も見つかりませんよ。シュラハルト君。」
イライラして爆発寸前の俺を見ていた同行者が言う。
「なんでアンタはそんな落ち着いていられるんだぃ!?このクソ暑い山の中で!」
「忍耐力を持つ。強い剣士になるために必要な事ですよ。敵が打って来るのを待つ。そういった戦い方もあるのですから。」
なんだか説得力がありそうな言葉に押されて俺は口を閉じる。この丁寧語の人の名はカルゴ。大きく、屈強褐色ボディに漢!って顔をしたスキンヘッドフェイスが特徴の紳士な斧戦士さんだ。あと、気付いてるとは思うがこの人は二年前村を襲った山賊親分さんである。なんか俺のチート能力の力で吹っ飛ばされたときに頭の打ち所が悪かったらしく、性格がこのようになってしまったのだ。と言うか俺は誰に話しかけているんだ。
で、その後は村の復興作業を手伝ったりして、今では村襲撃の罰として大工さんをやっている。みんなからは頼りになるおじさまとして頼られている。あと、戦闘の腕前はモルドレッド先生にも劣らないため、モルドレッド先生からも信頼されている。更に料理が上手という割とできた人なのだ。しかし正直言うと凶悪面で紳士語は怖い。
「まあ、気長に探すとしましょう。今日と明日しかないのではなく、今日と明日だけで一日とちょっとも時間があると考えたほうがよいですよ。」
「う・・・」
向こうでもよく聞いていた言葉だが正直言ってこれが効果あるとは思えない。+思考がどうのこうのって言うが、精神が変わっただけで状況が変わるか!?と思ってしまう。単に俺がひねくれてるだけかもしれないが、正直言うとただ単に都合が良いだけの気休めにしか聞こえないのだ。
「ま、シュラハルト君はまだ人生経験が浅いのであまりそういった話を信じろとは言いませんよ。」
俺27歳!と叫びたくなった。俺の精神はそこまで幼いのか。27歳でおまけに転生経験まであるのに浅いのか。まあ、多少12歳っぽくふるまったりはしているが、そのせいってワケじゃないだろう。根本的に幼いのか、俺は。
「まあ、そんな偉そうな事を言ってる私はまだ25なのですが。」
「嘘おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ」
遂に叫んでしまった。山賊時代は23だったワケだ。ありえへん23であのゴツ顔はないっ!と全力で否定する俺。
「ま、よく言われる事ですがね。ハハハ」
そしてこのゴツ顔でこの爽やかボイスと喋り方が更にビックリする。
「さて、シュラハルト君。本来の目的、コボルトとの戦闘は一回では勝てないと思って下さい。」
「え?」
「当たり前でしょう。剣を握って2年ぽっちの子供が勝てるハズありませんよ。一日に何度もトライ!それを繰り返してこそ勝てるのですよ。まぁ、今日中に10回は挑みましょうか。」
「10回!?」
まあ、なんとビックリ数字だと俺は思う。しかし俺の中には嫌とか面倒臭いなどそういった概念はない。むしろこれぞスリルだ。この無茶が俺の楽しみだ。やってやろうじゃん!と言う気分だ。
「まあ、シュラハルト君がやられるたびに私がうまい事やってシュラハルト君を連れて逃げるので大丈夫ですよ。」
「ホンマに無茶苦茶ですぜぃな。」
「ハハッ、ミカヤさんの方もモルドレッドさんがそうやりながら修行をするらしいですから。」
あの人が無茶苦茶の原因かっ!あの人、得体が知れない。と言うよりただ無茶な人なのかも知れないなと俺は思う。
「おっ!いましたね。」
「へ?」
俺はカルゴの言葉がコボルトがいた。と言う意味なのは理解できたが、全く見当たらないので疑問の声で言葉を返す。するとカルゴが得体が知れない変な広葉樹が生い茂ってる所の中でも馬鹿みたいに生い茂っている所を指さした。そして俺が視線で指先を辿って行く。そしてその生い茂ってる所の奥に何かの影が見えた。一見、人のようだが違う。頭から耳が生えていて尻尾、鼻のあたりの作りが違う。その他は森の木が影になっていて分からないが。あれはまさに獲物ことコボルトだ。
「さあ、シュラハルト君抜刀しておいてください。私があのコボルトをこちらへ呼びます。」
「よし!」
自信たっぷりな声と共に俺は腰の鞘から木曲刀を抜く。木製で良いのか!?と思ったが、モルドレッド先生が言うにはコボルトは自分達より強いか。では無く、剣を使いこなしているかで決めるらしいので大丈夫らしい。
さて、俺の人生初のモンスターとのエンカウント戦闘と行こうか