二話 遂に来たようだな・・・
「おっ!やっと届いたかその手紙。」
「え、先生が頼んだんですかぃ!?」
「うん、君達に是非出て欲しいからね」
俺が昨日届いた手紙を見せたらモルドレッド先生が頼んだものだと言う事が分かった。
「剣術大会。君達が騎士みたいな職業に就くためには必ず通らなければいけない道だからね」
フフ、遂に俺の夢が叶うぜ。と思ってガッツポーズをする俺。
ここに来て12年間色々あったけど遂に来たぜ!と今にも叫びたい気分だ。
「しかし先生。この・・クォーリアって王都ですよね?この村を出る事が許されてない私達に参加できるんですか?」
「ああ、それなら心配しなくても大丈夫さ。僕が引率するよ」
「え、じゃあ村の警護はどうなるんですか!?」
「そこも心配いらないさ。僕の代わりに王都から騎士が村の警護に来てくれる」
ククククク、と思わず笑ってしまった。来た、来た来た来た!遂に来たぜ!俺の求めていたスリル盛りだくさんの生活への第一歩が!
「ハハッ!シュラ坊やる気満々じゃないか!」
「それはそうですぜぃ!この12年間待ち望んでいたんですもの!」
人生史上最大級に俺は心が燃えている。と言うか向こうで俺はこれほど気持ちが燃えた事なんて無かったのだ。部活も入ってない。習い事もしていないで大会の類には全く出た事がなかったが、ここに来て12年目(つまり27年目)にしてこういった燃えるぜ!という気持ちを知る事ができた。
「そういえば大会はいつ開かれるんですか?」
ミカヤがモルドレッド先生に質問をする。そしてモルドレッド先生は笑顔で
「明後日」
と答えた
「明後日ですかぃ!がんばりますぜぃ!・・・・って」
「私も腕を磨き、明後日の大会に向けて・・・・って」
「「えええええええええええええええええええええええええ!」」
思わず二人揃って声を上げてしまった。普通一週間とかだろう。しかし明後日だと!?ムリだろう!2日間だぞ!?今日と明日しか時間が無いのだモルドレッド先生の元で剣の稽古をして二年目になるが俺達は多分まだ見習いレベルだ。その状態で大会に出たら終わるだろう。ただシンプルに必殺の一回戦負けが発動するだろう。
「あ、明後日って!なんで早く言ってくれないんですか!?」
「今日と明日しか練習できる時間が無いんですぜぃっ!?」
さすがの真面目学級委員ちゃんことミカヤもこれには焦るだろう。
「ん?普通に練習したって敵いっこないからさ。」
モルドレッド先生はいつもの笑顔を浮かべたまま言ったが、少しトーンが落ちた声はいつもより彼真剣な事を指している。モルドレッド先生は優しい人だが、正直言うと何か彼に対して心を全部開けないのだ。強そうには見えないのに山賊達を瞬殺したり、真剣なときに見える瞳は何か言葉では表せないようなオーラを出している。つまり、得体の知れない人なのだ。
「いいかい?剣術大会に出る選手はみんな生まれた時から剣を握っているような猛者達だ。君達は絶対に敵わない。じゃあ、どうするか。それは命の危険を犯してまで練習をする事だ。」
「い・・・命の危険を犯してまでって・・・?」
「・・・・なんですかぃ?」
「文字通りさ。君達には今日と明日、山篭りしてもらうよ。そこで実戦練習を積んでもらう」
モルドレッド先生はフフッと笑い、間を空けた後に
「この山に住んでいるコボルトという魔物と戦って来てほしい。あらかじめ言っておくけど別に倒す必要は無いよ。負かせばいい。OKかな?」
なんと大胆な修行だ!と俺は思った。がそれ以上に驚きの気持ちが勝っている。この世界に来て、魔物という単語を始めて聞いた。ザ・RPG要素が「この世界にいないんだなー」、とは思っていなかったが「身近にいる」とは思っていなかった。こりゃ面白い。やってやるぜ!初のVS魔物!
「さて、コボルトについてだけど」
確か獣人さんだった。そして剣とか斧とか持っててヒャッハー!で襲い掛かってくるタイプの魔物だったハズだ。まあ、コレは俺のRPGプレイ経験だけの知識だが。
「彼らは基本争いを好まぬ知能が高い種族で人の言葉も理解できる。しかし、強い相手との対戦は喜んでする武道派魔物だよ。」
180度逆でした。本場ではそういう設定なのね。とRPGと現実の違いをかみ締める。
「よし、分かったら早速出発するよ。時間が無いからね。」
「え、まさか私達二人でですか!?」
「ハハッ!そんなワケ無いだろう、命の危険を犯してもらうと言っても死んでもらっては困るからね。それに子供だけで村の外に出ちゃいけないし。」
「え、じゃあ、村の警護はどうなるんですか!?」
「大丈夫だよ、王都から騎士が来て今日から剣術大会が終わるまで警護してくれるから。」
「え、今日からだったんですかぃっ!?」
「ん、ああそうだよ。僕がいつ剣術大会の日からなんて言ったんだい?」
「・・・!」
「さて、準備をして来るんだ。すぐに出発するぞ。そして山篭り修行の時は二班に分かれてもらう。ミカヤちゃんは僕と、シュラ坊はもう一人の引率者と行動してもらう。」
「え、もう一人の引率者って誰ですかぃ?」
「安心するんだ。キミの知り合いであり、かなりの実力者だ。指導する事にも向いている人だから信頼してOKだよ」
その人が来るまで待っていたかったが、準備を早くして来いと言われたので俺は家へ向かう。
スリルを求めてこの世界に来て、ただで生きてるだけじゃスリルは手に入らないと知った。そのためには一回戦敗退99.9%(かな?)の剣術大会で優勝しなければならない。さらにそのためには魔物なんて言う得体の知れないヤツに勝たなくてはいけない。だが、俺はやるのだ。
俺がスリルを手に入れるためなら!
魔物だろうとなんだろうと叩き潰すのみだ!!