二十六話 闘気は気合いとやる気
「マジですかぃ・・・」
俺はフェーラルが割った石畳を見て、完璧に唖然となっていた。だってオーラだ。そしてバキンだ。やばくね?
「これはまだ『闘気』の初歩中の初歩よ。もっと鍛錬すれば石畳を割る所じゃないわ。」
「例えば?」
「んー、エネルギー弾みたいなの撃てたり、ものすごく速く移動できたり、闘気を刃の形にできたり、硬くなれたり」
「凄ぇですぜぃ」
「でしょう?アタシも最初見た時ビックリだったわ。」
「そう言えばフェーラルの『兜割り』(笑)も『闘気』纏っていたな」
「(笑)って何よ。まあ、そこはどうでもいいとして。そうよ、闘気は纏っているものの重量を上げる。しかし、それは自分以外の者との接触時だけで自分にとっては武器や拳とかの重さは変わらないわ。さっきの拳もそう。」
なるほど。つまり、自分は軽く、他人には重く感じる不思議な力。それが『闘気』なんだな。オーケイオーケイ。俺は勝手に納得。
「よし、つまり『闘気』で非力は解消できますぜぃって事ですぜぃな?」
「そうよ。アンタの攻撃を重くする事で武器弾きを無くす」
「よっしゃ、『闘気』はどうやって出すんですかぃ?」
「えぇーと・・・何て言うか・・ちょっと難しいのよね。こう・・純粋に燃える・・と言うか・・」
「ざっくり言うと気合いとやる気だっ!」
悩むフェーラルの隣にいきなりアークがいた。マジでいつの間にいた!?
「っアークいつのまにいたワケ!?」
「寝ようと思ったら特訓みたいな匂いがしたっ!」
「特訓みたいな匂いってなんですかぃ!?」
「強そうな匂いだっ!」
「強そうな匂いってなんですかぃ、刺激臭ですかぃ!?」
おっと聞くのはそこじゃない。
「アーク、気合いとやる気ってどういう事ですかぃ?」
「文字通り気合いでやる気になって『闘気』を出すんだっ!」
「いやいや、意味が分からないわ!」
「なるほどっ」
アークの説明に何かツッコんでいるフェーラルだが、なんで今ので分からない?気合いでやる気だろう?よし。
「アーク、ちょっとやってみますぜぃ」
「オウ!」
「よっしゃあああああああああ!」
行くぜ、俺。必要なのは・・・
気合いでやる気
そのために必要なのは・・・
根性か!?
よし、大体分かった。行くぞ!
せーのっ!
根性ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお!
「わっ!出ましたぜぃ!」
俺が心で叫んだ直後、俺の身体を覆う、なんか黄色いオーラが。おお、なんかパチパチ言って怖い!でもなんか強くなった気がするぞ!
「んなアホな!」
「やったなっ!シュラハルト!」
アークに言われた通り気合いでやる気だ。うんうん。アレ、安心したら『闘気』が薄く・・あれ?あれぇぇぇ?
「なんか消えましたぜぃ」
出せて安心した瞬間、消えた。色が薄くなっていき・・フッと消えた。あれれ?何で?
「ま、そうなるわよ・・・」
「シュラハルト!気合いだ!気合いが足りてない!気合いを保つんだ!」
「よし、分かった!」
「なんで分かるのよ!」
気合いだな!?気合い!よーし、気合いだ!行くぜ!
せーのっ!
根性ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!
またも心で叫び、黄色いオーラが出現。しかし、出現と同時に薄れかけていく。くっ・・・気合いが足りていないのか!?でも・・・
「おっしゃ出たあああああああああああっ!」
「よし、そこからだ!もっと気合いを!」
「よし!気合いか!気合いだ!行くぜぃ!」
根性っ根性っ!根性ぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお!
「よし!濃くなった!」
薄れかけていた『闘気』が再び濃くなる。よし、コツが分かった。
「時にアーク。これはどう言う仕組みなんですかぃ?」
「知らん!俺にも分からん!」
「マジですかぃ・・・よし、フェーラル」
「え、アタシ?」
なんか端っこで座っていたフェーラルがピクッとなり自分を指差した。なるほど、さっきから何もできないから拗ねていたのか。
「うん。『闘気』ってどう言う仕組み?」
「えーと・・・難しいんだけど・・・純粋な闘争心をそのまま力に変えたと言うか・・・」
うん、良く分からん。
「シュラハルト、俺は分かったぞっ!つまり綺麗な心でやる気になると出てくる不思議な力だっ!って事だろう!?フェーラル!!」
「・・・まあ、そんな所よ」
なるほど、綺麗な心でやる気になると出て来るのか。殺意とか敵意とか混ざっていたらいけないのか。よしよし、フェーラルは殴り合わないと綺麗な心でやる気になれないんだな?ふっ・・甘いな。
いや、よくよく考えたらこれあんまり使えなくね?使えるとしたら精々剣術大会とかくらいじゃん!?いやまあ、それで良いんだけど・・・
「でも、『闘気』はあんま実戦じゃ役に立たないわよ?『純粋な心で』が条件だから。実戦だと殺意とか敵意が混ざっているでしょう?」
「それにしては、さっきのフェーラルのラリアート『やる気』より『殺る気』だった気がしますぜぃ」
「そこはいいのよ。ほっときなさい。」
「スルーですかぃ!?」
「そんな事よりシュラハルトっ!ヤバいぞ!『闘気』が薄れているぞっ!」
「何ッ!」
しまった、会話に夢中になってしまった・・・!薄れてるぞ!よし、行くぞ!
根性、根性、根性!根性ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおお!!!
「よっしゃあああああああああああああああ!早速特訓お願いしますぜぃ!」
「よし来たぜっ!」
「・・・アタシ必要かしら」
こうして、俺の夜の特訓が始まった。