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剣ト魔法トチートノ冒険録  作者: のびよ君
剣術大会編
30/38

二十五話 闘気ってなぁに? 

「で、アンタは非力なのがコンプレックスと・・・なるほどねー、オーケイオーケイ♪」


 現在位置、宿屋『カタクチイワシ亭』のすぐ隣にある広場。時刻、午後8時。夜空がキレイだ。星がキレイだ。しかし、暗い・・寒い。広場と言っても、特にこれと言ったものはなく文字通りの広場だ。整えられた石畳の地面に、噴水が街路樹などを立ててそころ丸く囲んだような、マジで一般的な広場だ。


 で、そこで正座している俺となんか腕組みして嬉しそうに言っているフェーラル。人目が無いからか、帽子は取っている。夜風に犬耳が揺れている・・・なんで嬉しそうなんだよこの獣女・・・・!


「あのな、フェーラル。漫画じゃあるまいんだし、一夜漬けの特訓でムッキムキなんてありえませんぜぃ?」


 とりあえず、正論をぶつけてみる。するとフェーラルはちっちっちと指を振り。


「甘いよ、シュラハルト君。非力なキミでもすぐに力持ちになれちゃう方法があるのよ。・・・ま、才能次第だけど?」


 なんかドヤ顔。・・・くっ・・・腹立つな・・・!


「非力非力ってバカにしてるけど!フェーラルはコボルトだから俺より腕力があるんですぜぃ!?そこを忘れてほしくありませんぜぃ!フェーラルがコボルトじゃなかったら俺の方が強いですぜぃ!?絶対に!」


 情けないと分かりながらも反論。


「え、でもアンタ。ミカヤが持てる直刃直刀ロングソードを持てないから曲刀使ってるんでしょ?」


「アレは特殊ですぜぃ!」


「参加している女の子みんな直刃直刀ロングソードだったけど?」


「じゃあ・・みんな特殊なんですぜぃ!・・・あー!なんか情けないよ!畜生!どうせ俺は非力ですぜぃ!うわーん!」


 どうせ俺は非力だよ!と半泣きになり俺は叫ぶ。マジで情けないな。


「どうやら負けを認めたようね?シュラハルト」


 クックック。と笑うフェーラル。


「さて、そんなミジメな思いをしたくなかったらいますぐアタシに土下座して『お願いしますフェーラル様。私めはただの犬でございます。どうか、この非力な犬に力を授けてください。その代償とし、私めは犬として役目を果たすべく、貴方の言うことを一つなんでも聞きます。ですので、どうか!私めに力をこの非力な私めに力をぉぉぉ!』と言いなさい。」


「お願いしますフェーラル様。私めはただの犬でございます。どうか、この非力な犬に力を授けてください。その代償とし、私めは犬として役目を果たすべく、貴方の言うことを一つなんでも聞きます。ですので、どうか!私めに力をこの非力な私めに力をぉぉぉ!」


「早っ!アンタのプライドはどこまで低いのよ!」


「ええぃっ!黙れぃ!この際なんでもやったたるわ!畜生!」


「ま、言った以上は言う事を聞いてもらうわよ?シュラハルト」


「へーへ、でも一つだけってとこが優しいですぜぃな。」


 なんて言ってみると何がいけなかったのか、顔を赤く染めて俺に言った。それはもう凄い音量で。


「えぇい!黙りなさい!覚悟しなさいよ!聞くにも耐えない恐ろしい事させてやるんだから!」


「例えば?そしてウルサい!近所迷惑ですぜぃ!」


「そんなのまだ決まっているワケないじゃない!」


 思いつかないんですねー。分かりますー。恐ろしい事か・・・・ローラースケートで綱渡りとかか?おいおい、冗談はやめてくれ。怖いわ!


「さてと、そんなことはどうでもいいとして、アンタに伝授してやるわ。この世界の裏技をね!」


「裏技?」


 裏技ってなんだ?なんなんだ?気になるぞ!


「そう、裏技とは!」


 そこで一度溜めて


「それすなわち!『闘気』よ!」


 は?陶器・・冬期?・・ああ、気合いか。ミカヤも言ってたな。うん。で?気合いで強くなれと?何を言っているんだ?この娘は。アホなのか?


「なんて言っても分からないだろうから実物を見せるわ。」


 おお、よし見せてみろや!陶器だか冬期だか知らんけど!見せてみろや!


「で、アンタ。とりあえずアタシに本気で殴りかかってきて。何度も。」


「え?マジで言ってます?」


「うん。マジで。」


「ちょっと色々とふざけてんのか?ってカンジでイラついてるから割とガチでいくけどおk?」


「おkよオーケイ!」


「よし、じゃ、遠慮なく」


 俺は立ち上がり指をパキパキと鳴らす。俺はフェミニストなんかじゃないので。割と遠慮なくいきます。マジで。


「どっせい!」


 走り込みからの右ストレート!


「よっと」


 あっさり躱される


「しかーし!」


 しかし!そこから回転しての左裏拳!


「遅ーい」


 バックステップで躱される。


「まだまだいくぜーぃ」


 めげずに一歩踏み込んでの右アッパー!


「そんなもの?」


 躱す以前に外れた。


「まだまだだ!」


 必殺!顔面潰しの岩石拳!


「拳が止まって見えるわよ?」


「まだだ!くらえ!」


「ほら!どこを狙ってんの?」


「くっ!どりゃぁ!」


「残像よ!」


「なん・・だとっ!しかし!」


「なんですって!?」


「殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴るーーーーっ!」


「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ぁぁああっ!」


「フッハッハッハ!最高に面白いですぜぃ!」


「ホラ!もっと打って来なさい!」


「もっとだ!もっと俺は!速く!自分の限界を・・超える!うぉぉぉおおおおおお!」


「ッ!速いっ!コレはまさか・・・!『零地点突破』!?コイツ!この戦いの間に!?・・・ってアホか!なんでアタシがのせられてんのよ!」


「知るか!と言うか殴って来るなですぜぃ!」


「えぇい!黙りなさい!」


 と言うようなカンジで殴り合う事十分。


「だーっ!当たらねえ!これでも喰らえ!必殺!足払い!」


 文字通り、屈んでフェーラルの足下に足を掛けてスパーン!と払う。


「えっ!足払いぃぃぃぃっ!?」


「フッハッハッハ!喰らええええええっ!」


 俺は完全なる我武者羅状態であり、転んだフェーラルの顔面目掛けて右拳を振り下ろす!


「チェック・メイトですぜーぃっ!」


 完璧にムキになった結果です。はい。


「この!!なんでアンタは・・・っ!足ばっか狙うのよ!ロリコン足フェチ!」


 強引に態勢を立て直したフェーラルが、そこからのラリアートを俺喉笛にぶちかました。


「俺はロリコンでも足フェチでもなーーーーーぃがへおつぅっ!」


 変な悲鳴と共に俺は地面へ倒れこむ。


「げふっ・・我が生涯に一片の悔い無し・・って・・何ソレ?」


 倒れ込んだ俺が見たのは、俺を殴った後に吹き出したと思われる、フェーラルの身体を包む・・・なんだか分からないが凄そうな・・黄色のオーラ。バチバチと音を立てている。なんだ、そりゃ。極めると髪の毛金色になって逆立つのか?


「これが、『闘気』よ。」


「・・・『闘気』ねえ・・・。そのオーラはいいんだけど、で?ってカンジでんですぜぃ。」


「そうよね。じゃあ見せてあげるわ。」


 フェーラルが拳を握るとフェーラルの身体を包んでいた『闘気』がフェーラルの拳に集まっていく。


「よーし、じゃあ行くわよ!」


 フェーラルは黄色に輝く拳を思いっきり振り上げて。


「せいっ!」


 石畳に向かって振り下ろした。


 バキンッ!と短くもヤバそうな音が辺りに響き渡る。


「・・マジですかぃ?」


「マジよ。」


 石畳が割れた。文字通り。バキンと。50cmくらいヒビが入って・・割れた。


「これが、『闘気』の性質よ。」


 俺はもう一度、「マジですかぃ?」とリピートしていた。


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