序章3 まったりとしてる毎日
「いよいしょっ!」
掛け声と共に俺は荷物を言われた所に放り投げる。どすん!と地面に落ちる皮袋。中身は今月採れた穀物らしい。向こうではこういった穀物を栽培したりして運んだりしなかったのでこういった地味な体験も新鮮で結構面白い。
「おう、お前か。えーと荷物はコレで全部か。よし、あとは自由だ。手伝ってくれてありがとな。」
「いえいえ、大丈夫。礼には及びませんぜぃ」
「ハハッ、お前はまだ10歳だってのに難しい言葉を使うな」
「そりゃ――――あっ。ッと、と、」
「ん、どうした?」
「ゲホゴホッ!ゲヒッ!なんでもないからねっ」
そりゃ元々15歳の脳を持って転生して来たんだもの。と言いそうになってしまい。ごまかすべく、わざとらしく咳き込む。
「よし、じゃあ、適当にその辺ウロウロしてくるね」
「分かった。決して村から出るなよ。」
「分かってるって、行って来まっす」
しばらく歩きながら俺は考える。どうしようか、と。村の外には行くなっ、と言われてはいるが。割と出てる。そりゃ、転生したんだから楽しみたい。人生を。当然だとは思う。
ちなみに俺はこの世界で10年過ごして、10歳になっていた。10歳くらいになると不便なのは身体能力と身長くらいなので、生活が楽になった。正直、立ったのは比較的早い方だとは思うが、結構キツかった。赤ちゃんスゲェな。と俺は思った。
現在俺は、父の手伝いをしながら色々と探検したりする毎日の繰り返しである。親がいる。という状況は向こうでは孤児俺!だったワケなので、あまり体験した事がない状況だが、いいね、暖かい家庭って!と言うのが俺の感想である。
そして、俺の姿と名前の事に関してだが、姿は向こうの俺と大して変わっていなかった。変わったとしたら髪の色と瞳の色だ。向こうでの俺の姿は普通な日本男子十七歳の顔で髪型が何故だか知らないがアニメの主人公みたいになんかファサーッってなっていたので俺は今、髪が金色で、目が茶色。見た目的にハーフっぽい日本人顔つきの男の子(10)ってカンジだ。で、名前は呼ばれたとき思わず吹き出してしまった。俺に付けられた名前はなんかどこかの中二病が考えたような名前、シュラハルトだった。大体、この村の男子にはなんかそんなかんじの中二名が授けられるのが伝統らしい。ちなみに俺の父親の名前はギルバートだ。
まあ、こんな感じで10年間平和に暮らしているワケだが、剣と魔法らしい事は何も起こらないのだ。おかげで折角のチート能力を使えやしない。と言うか授けたっ!と言われただけであり、今あるかどうかさえも怪しいのだ。そんな事を不安に思ってこの前、この村の友達にやってみたが、どうやら厄介な事にこの能力は自分が相手を敵と認識していないと使えないらしい。見事に使い道がない。こんなモノはアレだ、向こう側でメガ粒子砲を家に持ってるくらい役に立たない。
まあ、平和は良い事だけどなーと思いながら歩いてると後ろから話しかけられた。
「シュラハルトっ、何でほっつき歩いているのよ!手伝いは終わったの?」
「フフッ甘く見るな!と俺はVサインをキメながら後ろにいる幼馴染にビシッ!と言ってやった。」
「その調子だと終わったみたいね、あなたって何でそんな変な喋り方思いつくのよ・・・」
「生業。」
「嘘!?」
「うん、嘘」
「ハァ・・・私達って結構長い付き合いだけどいまだにあなたの頭の中ってどうなってるか分からないわ・・」
今俺が会話してる少女の名前はミカヤ。一言で言うとマジメ。二言で言うとクラスの学級委員タイプの娘。そして俺のこちら側の幼馴染である。多分、彼女は転生者ではない。転生者なら俺の向こう側のボケに向こう側のツッコみを入れて来るだろう。
「さて、娘さんや。アナタはワタクシに用があるのデスカ?」
「ん、私はこれから騎士さんに差し入れに行くのよ」
「よし、ボクもお供します!ワンワン」
「さあ、行きましょうか。猛犬シュラ公っ」
「猛犬って何!?」
「なんとなくよ。ほら、行くなら行きましょう?」
「ハイ、姫様!お供しますぞ」
割とボケる俺にツッコんでくれないこの女。・・・・侮れない。と俺の中で変な俺が燃えている。
と言うワケで騎士さんの所に来た。騎士さんとは王都から村へ配備されて、村の治安を守ってくれている方だ。正義の味方、格好良いねぇ。と思う俺だが実際俺の転生生活に刺激がないのは騎士だんが村を守ってるからである。しかし、だからと言って正義の騎士さんを恨む事もできない。村を守ってくれているのだから。
「騎士さーん。これお婆ちゃん達が差し入れにと」
「おっ、悪いねミカヤちゃん」
鎧をがっちゃんがっちゃん鳴らしてこちらへ近づいて来る騎士さん。彼の名前はモルドレッド。この村から騎士になるために出て、騎士のお勉強をして王都に配属されるくらいの騎士になった。努力の人らしい。俺からのイメージだと彼は騎士さんと言うよりお兄さんみたいなもんだ。仕事がないときには村の子供達と遊んでくれるし。まさしく人の良い人だ。
「おや、シュラ坊もいるじゃないか。」
「ヘイッどうもー」
「ハハッいつも通りだなっ」
「ハッハッハ、モルドレッドさんもいつもに増して爽やかですなぁ」
「ハハハハッ、君は本当に面白い子だな」
「えーっとじゃあ、騎士さん。今日はこの辺でっ」
「おう、ミカヤちゃん。差し入れありがとうねっ!シュラ坊もなっ!」
「それでは騎士さんシーユーアゲウィンッ!」
この何だかんだでまったりしている俺の転生先ライフは翌日、遂に崩壊する事になったのだった。