二十三話 決勝で会おう!
「ふー、やっと1日目終わりですかぃ」
「なんとか二人共、決勝まで行ったわね。貴方がいつ余裕振って負けるかどうか心配しちゃったけど良かったわ。」
「ん?ミカヤ。そんなに俺に決勝に行ってほしかったんですかぃ?」
「違うわよっ!私は貴方が余裕振って予選敗退なんてしたら指導者であるモルドレッド先生が恥をかくでしょう!?」
「なんだ、つまらんですぜぃ・・・。それとモルドレッド先生はそんな人格じゃないと思いますぜぃ?」
「まあ、確かに先生はそんな人ではないかもしれないけど、負けたりしたらあそこまでしてくれた先生に悪いでしょう?」
「ハッハッハ!でも勝ちましたぜぃ?ミカヤさんよぅ!」
「そうね、もう過ぎたことだし、言っても仕方無かったかしら・・・ごめんなさい。」
ミカヤに素直に謝られ俺は数秒硬直、そして
「ぶっ」
吹き出した。
「なっ、何で笑うのっ!?」
「いやいやいや、さっきまで色々説教的な事していたミカヤがいきなり謝ると、なんかっ、笑いが・・っ!」
「な、何よソレ!?」
マジでショックを受けたらしいミカヤを見て更に爆笑。
最近、フェーラルやアークのコボルト二人とばかり絡んでいて、あまりミカヤとは会話をしていなかったが、俺は同じ転生者であるフェーラルや気が合うアークと会うまではいつも村でミカヤとこんなカンジの会話をしていたのだ。
俺の生まれた村には軽口を叩けあえる同年代の子などミカヤ以外におらず・・と言うか村には子供が少なかった。いたのは俺とミカヤと他十名弱の小さなボーイ&ガール達だ。
まあ、俺は小さな頃からミカヤとこんなカンジの会話をしてきたワケで、最近色々大変なときにこうして会話をするとなんか心が落ち着くなぁ。と言いたいのだ。
「そう言えばミカヤ、凄いですぜぃ。あの見事な剣術!アレだ。すぅっ!と受け流してバシッ!と叩く動きが素晴らしいぜぃ」
そう、ミカヤは一回戦以降も受け流しからのバシーン!で予選を突破して行き、一本も取られず予選を勝ち抜いたのだ。マーク曰く「そーどますたーがーるなのですぅ」と言う評価だ。
「ふふっ、ありがとう。でもあれはまだまだよ。山でアークから教わった身体裁きとか先生が言う『闘気』だって出せてないもの・・・」
トウキ・・・?陶器?冬期?なんだ、そりゃ・・・・トウキ・・・闘気?ああ、気合いですね。分かります。
「まだまだなんて言っているけど、アレはもう完璧にプロだと思いますぜぃ?」
「いや・・ダメよ。貴方も見たでしょう?決勝へ行った人達のあの剣技を」
「うぐっ・・・」
ミカヤのその言葉を聞きちょいと思い出したくない思い出がフラッシュバック。と言うか今にも逃げ出したい思い出が・・・・
それは俺が予選を突破し、ベスト8の八人が闘技場の真ん中へ並んだときのことだった。
ベスト8へと進出したのは。俺、ミカヤ、マルク、大剣場違い君、他四名。大体なんか予想はしていたのだ。こうなるだろうなと。俺は俺で負ける気はしなかったし、頑張ったし。マルクは強いし。ミカヤも強いし。そして場違い君は場違いだし。顔知っているのはミカヤとマルクと場違い君なので他4名は、他4名と言わざるを得ないと。
まあ、そんなもんになるとは思っていたワケだが、その後だ。
「組み合わせ決めましたー見ておいてくださーい」なんて言ってきた審判長的なお姉さんが渡して来た紙。そこに書いてあった事が問題だったのだ。何が問題かと言うと。これだぁ!
決勝Aブロック
第一試合
シュラルト(B-427)対マルク(Dー149)
第二試合
ヒビト(Aー001)対コンダ(Fー070)
と言う事だ。
試合はやっぱり王道。トーナメント方式であり、第一試合の勝者が第二試合の勝者とやりあう方式なのだが・・・ヤバくね?
実績が得られるのはベスト4までだ。つまり、少なくとも一回は勝たなければいけない。しかし、その一回戦目が、あの居合の達人ことマルクだ。そして勝ったところに待っているのがあの場違い君ことヒビトだ。
確かに燃えている!とは言ったが、「マジですか・・・・」と言わざるを得ない状況だ。
更にマルクは「ははは、大丈夫だ。俺は別になんとなく来たワケでなんか必要でこの大会に出たワケじゃないさ。だから、全力でぶつかって来いよ!でも・・・・俺も全力で行くけどな?」とか言ってめちゃくちゃ不安にして来たのだ。くそ・・情けない・・何が燃えているだ・・・こうなった瞬間にビビるのか・・情けないっ!でも・・っ!怖いっ!怖いぞおおっ!
「ま、勝つしかないけどな」
「・・・いきなりどうしたの?」
つい言葉に出してしまったが、怖いけど勝つ!勝つぞ!
俺は胸に固い決意を秘めて、自分にエールを送る。そして、ミカヤの手を握り、なんかびっくりして顔が赤くなって「へっ!?」とか言ってるミカヤを無視して言った・・・・・いや言ってしまった。あのセリフを!
「ミカヤ・・・・」
「ななな、何よ!」
なんか赤くなってる。いや、そうではなくだ。言ってしまったのだ。勢いに任せて
「明日は決勝で会おう!」
あの死亡フラグを!しかし、そんな事を知らぬミカヤは
「うん、シュラハルト。決勝で会いましょう!」
と言って俺の手を握り返した。
・・・・言ってしまったものは仕方がない。今さら後悔しても遅い!
だから・・・俺のスリルある剣魔法ライフのため・・・絶対に勝つ!勝つのだ!死亡フラグなんてクソくらえだ!