二十話 開会!&勝ちフラグ
「さて、ついに来たぜぃ!この時が!」
いまだに後頭部にジンジン来る痛みに耐えつつテンションを上げて言う。だってマジで痛いんだもん。
「と言うかシュラハルト、貴方どうしたのよ・・時間になっても来ないと思ったら食堂で気絶していて・・」
「いやー!ビックリだったよな!ハッハッハ」
ミカヤの言う通り、俺は思いっきり気絶していたのだ。フェーラルに殴られてから今の今までずっとだ。ずっとね。うん。そしてアーク、お前は何もしなかったようだな。関心関心。
「わー、人がいっぱいだー!」
「年に一度の剣術大会だし、多分一万人近くはいるんじゃないかしら?」
「ハッハッハ、皆!もう少しで開会式が始まるよ!」
はい、現在。剣術大会開催の数分前と言うことで俺達6人は地上20mはあるであろうクォーリア大闘技場の観客席から闘技場の中央にある石畳を見下ろしているのでございます。また数分後には俺とミカヤがあそこに立つんですよね。はい。・・・なんて考えていると中央の石畳に向かって歩くオッサン一名。なんか鎧っぽい肩当てと白いマントそして金色の王冠をしている。王様か?と俺は思う。
「お、なんだ!あのオッサン!」
「あれは国王だよ・・アーク君。」
王様に聞こえる馬鹿デカい声で言うアークの馬鹿にモルドレッド先生が苦笑いで言う。
「あれが・・・国王様・・」
ミカヤがなんか呆気をとられている。まあ、確かに何か王ってのはダルンダルンに肥えた王冠オヤジと言うイメージしか無かったが、あの王様はムッキムキのオジサマである。めっちゃ強そうだ。そして、その王様が今、石畳の上に立つ。で、5秒程間を置き、口を開いた。
「この闘技場に集まりし、国の民達。そして未来の剣士達よ」
威圧感しか無いような低い声が闘技場全体に響き渡る。
その瞬間。騒がしかった闘技場全体から声が消えた。もの凄く存在感、そして威圧感のある声だ。
「まずは、貴殿らにこの闘技場へ足を運んでくれた事を感謝する」
王様は少し頭を下げて、言葉を続ける。
「そして、未来の剣士達。貴殿らはそれぞれの目的がありここへ剣を振るいに来たであろう」
王様はぐるりと闘技場全体を見回し
「剣の腕を磨くため、強者とぶつかるため、国最強の名を手に入れるため、あるいはその全て。」
しかし、と一度切って王様は続ける。
「まずは、正々堂々と。剣を交えることを楽しめ。それを楽しんだものこそが、真の強者と言えよう。この私から言えるのはこれだけだ。」
そして王様は拳を天に突き上げ
「では、これより!クォ-リア剣術大会を開催する!それぞれの意思を剣に宿しぶつける事を誓え!」
王様の最後の一言により、周りの観客達からは拍手やうおおおおおおおおおおおおおおおおっ!と言う奇声が上がる。それだけ凄い王様なのだろう。あのオッサンは。
「さてと、シュラ坊とミカヤちゃん。行くよ。組み合わせが発表される。」
俺とミカヤはモルドレッド先生と共に控え室に向おうとする。
「ま、頑張って来なさい二人共。ここで見てるから。じっくりと」
「頑張って来いよ!お前ら!楽しみにしてるぜ!」
「お兄ちゃんとお姉ちゃん頑張ってねー!」
フェーラルとアークとライカのコボルト3人の声援を受けて俺とミカヤは控え室へと向かった。
「凄い人の数ですぜぃ」
「・・四千人はいるわね。」
「今年は人数が歴史上一番多いらしいよ。二人共」
はい、現在俺らは控え室前ですが。人が多すぎて組み合わせ表もクソもありませんね。はい。見えないし。
「おっと、そういえば渡すのを忘れていたな。」
なんて言ってプレートを2枚差し出し、俺達に渡すモルドレッド先生。
「これはアレですかぃ?選手番号みたいな?」
「そう言う事だ。この番号で呼ばれたら、レッツGOだよ」
「なるほど。ミカヤはC-428番で・・俺は・・・B-427番か。なんか悪意を感じますぜぃ。」
と俺がボソっと言うと俺の方を叩くヤツがいた。・・・マルクだ。
「シュラハルト、君は何番だ?」
「ん、B-427番ですぜぃ」
「427番か・・・偶然とはいえ、面白い番号を引いたな。」
「ほっといてほしいですぜぃ」
「まあ、大丈夫だ。俺とは予選では当たらないな。ブロックが違うし。」
「ブロックってこのBとかCみたいなヤツですかぃ?」
「ああ、ちなみに俺はDー149だ。」
「面白味の無い数字ですぜぃな。」
「ハハハ、あまり言ってくれるなよっ。」
「ところでマルクは組み合わせ表を見たんですかぃ」
「ああ、人ごと透視すれば楽勝に見えたよ」
「あ、じゃあ俺のもみてくれるち有難いぜぃ!」
「よし来た」
マルクは一度目を瞑り、額に人差指を当ててカッ!と目を見開く。マルクの目は赤く光っており、なんだかカッコ良い。そして20秒くらい何かを凝視するようにした後、もう一度目を瞑り、透視を解いたようだ。
「・・・どうでしたかぃ?」
「うん、シュラハルトの相手はB-322番だね。」
「B-322ですかぃ」
俺はぐるりと見回す。まあ、さすがに居るワケ無いか。そして今気づいたけど先生とミカヤとはぐれたよ!どうしよう!と思った時にクックックと笑うボーイの声がした。で、俺はそちらを向く。そこにいたのは七三分けの金髪頭でなんか豪華そうな絹の服を着た裕福そうな顔立ちの少年。コイツはこの格好で剣術大会に出るのかよ。と色々とツッコミたくなる。
「この庶民が僕の初戦の相手かい?」
何か嫌味ったらしく言われて、少しイラッときながらも彼のプレートを確認。なんとB-322番。コイツが初戦の相手か。この貴族ぼっちゃんが俺の相手かい?
「まあ、少々僕とは釣り合わないけど。貴族仕込みの剣技で美しく散らせてやるよ。」
その言葉で俺は完全にブチ切れ。ここで暴言を吐きつつこのボーイの裕福ヅラを潰してやりたいと思ったが、それに気づいたかのようにマルクが俺を止める。いや、まて。殴らせて?ね。お願い。
「ま、引き立て役になってくれたまえよ。庶民君。」
クックックと笑いながら手を振り去っていくあのボーイを俺は睨みつけていた。それはもう凄い剣幕で。白目&歯茎剥き出しみたいなカンジで。もう。
「オイオイ、マルク君。なんですかぃ?あのボォォォォイは?」
「サムソン=セナール。まあ、この国の貴族の・・ドラ息子だよ。多分口だけだと思うから。」
「ドラ息子か。マザコンですかぃ」
「マザコンとは限らないけどね?」
「いーや、マザコンだ!ドラ息子はマザコンと決まっておるぜぃ!」
あのサムソンの顔を何度も思い浮かべ中指を立てようとするたび、マルクに止められ。そしてそのたびに俺に冷静さが戻って来る。
そして
冷静さを取り戻した思考で俺は思う。
「勝ちフラグ立ったんじゃね?コレ」と。