十八話 割と出会うのです
「見事な賑わいですぜぃな。ここだけで露天が軽く20店はありやがりますぜぃ」
「ま、人がたくさん集まるのを利用して商売しようってのが多いのよ。」
「わー、色々なお店があるねー」
「あ、こら。ライカちゃん!勝手に走っていっちゃ駄目でしょ!」
「ハッハッハッ!皆俺の事を見てやがるぜ!」
「・・アーク君。何故君は尻尾とか耳とかを隠そうとしない・・・?」
俺、フェーラル、ライカ、ミカヤ、アーク、モルドレッド先生。計6人は王都クォ-リア。そしてそこにある巨大な闘技場である、クォーリア大闘技場にいる。この石造りの闘技場の中には様々な露天があり、観戦のお供であるポップコーンやらジュースが売っている。この世界にポップコーンがあるのかー意外だなーと思いながら、大会開始までのんびりと闘技場の中の見物をしている。
「さて、僕は参加要請をして来るけど君達はどうするんだ?もっと見物していたいと言うなら、大会開始・・・13時の30分前、つまりは12時半までにまたここにいてもらえれば自由にしていていいよ」
「んじゃ、俺は自由行動でお願いしますぜぃ」
「アタシも」
「わたしもー」
「ライカちゃんがそう言うなら私も自由でお願いします」
「俺もだ!」
見事な全員一致だ。
「よし、分かった。じゃあ、12時半までにここに集合だよ。それじゃあ僕は・・・」
「あの・・・先生ちょっといいですか?」
モルドレッド先生が言い終わる前にミカヤが質問
「ん?どうしたミカヤちゃん」
「もしも、私がシュラハルト予選で当たった場合、どうすれば良いでしょう?」
oh・・・そうだった。そうだった。それだ。それだよ学級委員よ。浮かれていて忘れていたけど。それだよ。それ。一回戦負けどころじゃないよ。・・・・妙に不安になってきた。
しかし、そんな不安はモルドレッド先生の次の一言で打ち消された。
「はははっ、大丈夫だよ。その辺は主催側がなんとか配慮してくれるらしいよ。まあ、最も、生徒が少ない所だけだけどね。」
おお、素晴らしい。ラッキーだ。・・・それにしてもそんな事に配慮してトーナメント作ったら恐ろしく手間がかかる。結構大掛かりな大会なのか。
と勝手に納得。
「じゃあ、僕はこれで」
その言葉を残すようにモルドレッド先生は人ごみの中に消えて行った。
「さーてと。現在時刻は丁度11:00。1時間半エンジョイできますぜぃ」
「さてと、何か食べる?シュラハルトの奢りでね。」
「よし、食べようぜ!シュラハルトの奢りでな!」
「待てぃっ!犬二人!俺は確かに金は持って来た!でもな!貴様らに奢るくらい財布は裕福では無いんですぜぃっ!?」
はい、確かに俺は今年から我が家に実装されたお小遣い制度により、親を手伝う代わりに小遣いを持って来た。しかしそれは13G。13Gだ。13G。少ないだろう。俺はよくこの世界の金の単位を知らないが13Gだ。少ないんだろう。親はお菓子でも買って食べなさい。と言って渡してくれたが、村のお菓子はそこまで美味しく無いと知っていた俺はこつこつ貯めていたのだ。それでもたったの13Gだ。少ないんだろう。
「どれくらいあんのよ?」
「13G」
俺の答えた瞬間、他4人が黙る。少ないからか?だよな
「分かった。アンタが馬鹿ってことが凄い分かったわ。ちょっと来なさいシュラハルト」
「馬鹿って何がですかぃ?」
俺が聞き返すとフェーラルは小声で聞き返す
(アンタはアレなの!?この世界のお金の単位も知らないワケ!?)
(全く!)
こちらもなんか小声で応答
(・・なんで知らないワケ?)
(田舎育ちですので)
(それでもミカヤは知ってるわ!と言うかコボルトでも知ってるわよ!これだけは言えるわ。勉強しなさい!)
(いやー異世界だ!勉強しなくていいや!ヤッホーイ!て思いませんかぃ?)
(思わないわよ!それ以前の問題よ!)
(HAHAHA)
(黙れっ!)
(いやー、すみませんぜぃ)
(・・・まあ、いいわよ。教えてあげるわ。この際)
(サンクスですぜぃ)
(この世界にはお金の単位は3つあってね、C=カッパー。S=シルバー。G=ゴールド。で、1Cが1円だとすると。1Sは10円。で、100Sで1Gなんだけど計算できる?・・できるわよね?まさかこの世界に来てから計算やってませんぜぃ!とか言わないわよね?)
(馬鹿にしてもらっちゃ困りますぜぃ・・・えーと)
いや、待て。計算・・・・。この世界に来てから対してやっていなかった気が・・・。えーとだなS=10でS×100だろう?簡単だ。よし、100SよしS=10だからあとは100×10で・・・・
(・・・・・・)
(さっきから無言なんだけど・・もしかして・・・)
(ッ!1000だ!1000!よし!どうだ!)
(そんなに喜ぶことでも無いわよ・・で、アンタの13Gはいくらでしょう)
(そんなのはわかりますぜぃ。13000C!)
(ドヤ顔できる問題じゃないわよ・・今の)
(って13Gて恐ろしく大金じゃないですかぃ!)
(今気づくの!?ホント馬鹿!?)
「さて、話しは済んだ?」
ミカヤの声が飛んでくる。
「済んだわよ」
「済みましたぜぃ」
割と中途半端で終わったが、聞く事は聞いたしフェーラルが済んだと言っているから済んだと答える。
「じゃあ、12時半にここで集合。忘れたら駄目よ!?特にシュラハルト」
「分かってますぜぃ。ミカヤ姫」
「よし、じゃあ。私はライカちゃんの面倒を見るからフェーラルさんとアークはそこの馬鹿の面倒をお願いね」
と言ってミカヤはライカに引っ張られて人ごみの中に消えて行った。
「さて、何か食べるんですかぃ?今なら高くないものなら奢れる気がしますぜぃ」
財布の中に13000円あると知って俺は調子に乗った発言をする。
「その前にちょっと良いかしらシュラハルト。」
「はい、なんですかぃ!フェーラル君」
「あの馬鹿をなんとかした方が良いと思いまーす」
フェーラルが指差した先にはその辺ウロウロして人々から注目の目を浴びているアークが。
「・・・確かに。コボルト狙うバカ達からアイツが・・・狙われる事は無いと思うけど、まあ、狙われたら面倒だからな」
「適当に服でも買いましょうっ」
「だな、でも安いヤツ」
俺は言い、適当に当たりを見回し服を売っている露店を発見。あるもんだな。と思う。俺はそのM店に駆け寄り、適当に服を選んでフェーラルに見せる。
「こんなんでどうですかぃ?」
「ぷっ!、ジャージって!なんかアイツにピッタリじゃないっ!・・・ってジャージ?」
「ん?ジャージ?」
俺は適当にとった服をよく見てみる。黒い糸を編むことで伸縮性に長けた生地・・・そしてこの手触りは完全に・・もう10年前だから覚えてはいないが・・ポリエステル(だっけ?)だ。そして肩のあたりに入ったラインとこの真ん中のチャック・・・・完全にジャージだ。と言うか計算はあまり覚えていないのにこう言うことだけは覚えているのだろうと疑問に思う。
「おぉっとぉっ、お客さんっ!目が高ぁいですぅ!」
俺に声を掛けて来たのはアホ毛ショートボブヘアーの少女・・・・ここの店員さんなのだろう。年齢は・・・12歳。俺と(あくまでシュラハルトの)同じと見られる。
「これは我々が独自で考え出した『ジャージ』と言うものでございましてっ、伸縮性に長けた素材でございますのでっ!とても動きやすくっ!この剣術大会に参加する方は是非っ!買ってもらいたいと思っておりますっ!」
このジャージを通販番組みたいに宣伝して来たのは先のアホ毛ショートボブ少女の隣に座っている俺と同い年くらいの少年。髪型は見事なオールバック。そしてジト目に見えるくらい細い目をしている。
「さぁてっ、お客さんっ!この『ジャージ』なんと今では3Gぉっ!お安いですよぉっ!」
「そして3Gのところを初回限定サービスで1G50Sとさせて頂いております!今だけですよーっ!『今』がお買い得なのですっ!」
よし、よーく分かった。コイツらは転生者だ。




