十六話 いざ、剣術大会へ!
「来たか、シュラ坊。」
時間帯のおかげで少し寒い村の広場で、モルドレッド先生、ミカヤ、アーク、ライカ、カルゴが集まっていた。
「・・アークとライカも行くのですかぃ?」
俺がちょいと驚きを混ぜて言う。
「ったりめぇだろ!俺は強い奴が戦うのを見るのが好きなんだ!」
だからお前は格闘ゲームのキャラかっての。そして、何故お前は尻尾と耳を隠していない?あのワイルド獣娘のフェーラルでさえ隠しているのに。
「・・駄目かな?お兄ちゃん」
フェーラルと同じような格好(しかし断然似合う)をしたライカが俺を不安気な表情をしながら上目遣いで見て小首を傾げて聞いてきた・・・・ん?
・・・・お兄ちゃん・・・だと!?
「い・・いや、ダメじゃなくてだな。一昨日、コ・・コボルトの集落燃え尽きてコボルトの皆さん、復旧作業してるだろ・・?手伝わなくて良いのかって事でだなぁ」
先程のお兄ちゃんショックで俺は言葉が所々詰まり、気持ちの悪い事になる。いや、だって驚くだろう?こんな可愛い獣ロ・・・げふんげふん!獣娘にお兄ちゃんなんて言われたらそりゃあね。実際に俺は気絶した状態のライカを一昨日パーシヴァル達から取り返しただけで顔を合わせるのは初めてなワケだ。それで理論上初対面で「お兄ちゃん」はねぇ?戸惑うよね?普通そうだよね?別に俺がロリk・・・ゲフンゲフン、まあ。うん。とりあえず俺がこうなるのは普通だと。はい。
(ロリコン)
耳元で小声のフェーラルの声が聞こえる。
(俺はロリコンじゃありませんぜぃ!決してだ!)
小声で応戦
(・・そう、まあ、きっとその内頭角を表す事になるわね)
(俺は決してロリコンじゃ無いからな!絶対ですぜぃ!)
フェーラルの完全に軽蔑した目で小声での戦いは終わった。ロリコンじゃない!絶対に!
「お前ら仲良いな!」
「まあ、武器を交えた仲ですからね、ハッハッハッ!」
「「仲良く無い!」」
完璧に何も知らないアークとカルゴに向かい叫んだ俺の声はフェーラルの声と重なりハモる。
「ぐぬぬ・・・・」
「ロリコン・・・っ!」
睨み合う俺と獣娘。
「やっぱり仲が良いじゃない。貴方達」
微笑みながらミカヤが言って来た。この学級委員女め・・・!貴様に何が分かるっ!そして俺はロリコンじゃないっ!
「シュラ坊、昨日の件はありがとうな。僕達が不甲斐無かったばかりにシュラ坊に戦わせる事になってしまって」
「いえいえ、ちょろいちょろいですぜぃっ!」
実際には足が炭&腕がモゲタ!&顔半分と言う目にあったが
「それで、あの後パーシヴァル達はどうなったんですかぃ?」
「うん、ランスロットが速攻で王都まで運んで要件を話し、戻って来て村の警護をしてくれるらしい。」
俺は実際、みんなが蘇生したのを確認した瞬間に倒れてしまい詳しい事は全く分からないのだ。だから戦いの後に来たランスロットが死んだ皆を蘇生させたのをどう報告しているか。それが気になる。
「昨日の朝に出発して、明日の朝8時半には戻るって言っていたんだけどなぁ・・」
俺はこの世が死亡フラグが割と通用する仕組みだと言うことを体感しているのでランスロットが「明日の朝8時半には戻る・・・私が来なかったら・・その時は・・・」とか言っていない事を祈りたい。
「おっと、来たようですね」
カルゴが朝日が差している空を見上げ、言った。
「・・・なんだ・・アレ」
思わず、思った事を口に出してしまった。朝日をバックにして見えたシルエットは地上からでも分かるくらい巨大な・・・翼と3本の尾を持った何か。その影がだんだん近付くにつれて、その招待が明らかになる。更にそれと同時に俺のビックリ顔がヒドくなって行く。
「ド・・・ドドドド・・Drachen?」
思わず英語の発音になった。言った通りマジでドラゴンだ。しかもデカい。とてつもなく。デカい。笑ってやりたいくらいデカい。インド象(転生前に図鑑で見た!)の1・5倍はあるであろうか。まあ、とにかくデカい。
「どうよっ!ドラゴンは!アタシは転生してからたくさん見て来たもんね!」
何故か得意気な顔の獣娘は無視するとしてだ。まだ地上に着くまで50mはあろうにもその大きさはとにかくデカい。色は黒。ツヤッツヤの黒だ。そして爪、角、牙は金色。目の色は焼け付くような赤。黒龍だ。格好良い・・・・けどそれ以前に怖い。本当にだ。ニュアンス的には起きたらライオンが覗き込んでいましたー。くらい怖い。
「お疲れー、ランスロット!」
ズシィイィインと言う着地音と共に砂埃が舞う。そしてデカい。更に怖い。なんか俺の方を見てグルルと唸っている。
「うむ、5分程遅れてしまったが・・・大丈夫か?」
「大丈夫、大丈夫。トバしていけばすぐに着くよ!」
軽い調子のモルドレッド先生となんか重苦しい雰囲気のランスロットが揃うとなんだか面白いのは気のせいかな?
「了解した。」
ランスロットは頷くと、高さだけで5mはあるであろう黒龍から飛び降りる。ガショオオンと言う金属音が響き、俺、フェーラル、ライカ、ミカヤ、アークが「うわ・・痛そ・・」と言う顔になる。
「さて、みんな!早く乗るんだ!すぐに着くとは言え、急いだ方が余裕があって良いからね!」
いつの間にか黒龍に乗っていたモルドレッド先生が黒龍の上から手を振る。少年少女5人が「どうやって登るんだよ!そしてアレに乗るのかよ!」という顔になる。
「シュラハルトよ」
皆がおそるおそると黒龍に近付いている時、いきなり背後からランスロットの声が聞こえ、口から心臓が飛び出しそうになる。
(な・・なんですかぃ?)
小声で呼びかけに応じる
(うむ、まずは謝らせくれ。私がもう少し早くあそこへたどり着けていればまだ子供である貴殿にあのような光景を見せる事は無かったと思う。)
ランスロットも小声で俺に話し、またもや謝ってくる。
(それはもう済んだことだから大丈夫ですぜぃ。本当に。)
(うむ・・そうか・・だがもう一つ謝らなければならぬ事があるのだ。)
(何ですかぃ?)
(実は貴殿の奇怪な術の事を、王に話してしまったのだ。)
(・・・本当ですかぃ)
(ああ・・本当だ。事実を偽ってはいけないと言う教えであったが、私の行動が身勝手だったのは確かだ。すまない)
別に悪い事でも無いのだ。あるとすればこのまま俺のチートが知れ渡るとこれから色々行くであろう先々で「俺強えぇ」展開があまりできなくなってしまうんじゃないか?と言う変な不安があるだけだ。そしてランスロットは皆が死んだのを忘れてはいないらしい。やはりチートの対象にならない限り何らかの変化は無いと言うことか
(いいや、大丈夫ですぜぃ。減るもんじゃないし、村の警護頑張って下され!)
(うむ、承知した)
俺とランスロットは小声での会話を終え、ごつんと互いの拳をぶつけ合う。・・・ランスロットは全身鎧なのでちょっと痛かった。
「さて、張り切っていきますか!」
俺で両手を上げて身体を伸ばし黒龍にみんなの手を借りて上手い事登り切る。下にいるランスロットとカルゴに手を振り、黒龍の背中にしっかりと掴まる。
「さて、行くよ!」
モルドレッド先生の声と共に俺の視界のすぐ横の黒龍の翼がバサッバサッと砂煙を巻き上げ、動き始める。そして少しずつ少しずつ上昇して行きその高度が100mくらいに達した時
「さて!しっかり捕まっていなよ!」
モルドレッド先生が言ったと思った瞬間、黒龍は絶叫マシンもびっくりのスピードで飛びだった。
俺はただ
「うぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
と言う悲鳴の尾を村に残して剣術大会へと出向いたのであった。




