とある健気なブタの話
俺は奴等ほど健気な奴等を見たことがない。
奴等の仕事は人をあるものから守ることだ。
奴等がいない世界を想像したことはあるか?
それは危険な落とし穴に満ちた恐ろしい世界にちがいない。
だが人は奴等に何も報いやしないのさ。
それどころか奴等が頑丈なのをいいことに、
足で踏みつけ、車で引き、あまつさえ奴等をブタ呼ばわりして蔑んでいる。
踏まれるごとに奴等が挙げる声にも眉を潜めて騒音扱いだ。
それが当然だと言うように誰も奴等に目を向けないし、奴等の功績に気付こうとしない。
それでも奴等は人を守り続けている。
それを健気と言わずになんと言おうか。
……誰の話か分からない?
勉強不足だな。お前は一体学校で何を習ってたんだ。
溝蓋の話に決まってるだろ。