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第7話 脅威――これぞ四天王、絶対強者たちの実力――!

 一回戦を終え、控え室から出た奈子が、通路を兼ねた広いホールへ入る――と。


「えっ。……な、何ですか? このにぎわい……」


 広いホールの左右には、軽食などの提供を主とする屋台やたい居並いならび、りんご飴や一口カステラなど菓子を提供する店もあった。


 屋内おくないにもかかわらず、まるでお祭りのような様相ようそうだ。実際、子供連れの母子なども散見さんけんされ、販売している軽食をねだる少年の姿も窺える。


『ねーねーお母さん、アレ買って買って~! あの……先程さきほど栄海奈子さかみなこ選手と《鉄壁の守護者》の試合でも使われていた、国産牛と卵をふんだんに使用した、今サッカー大会のため雇用された有名シェフ手製の一品……スペシャル他人丼たにんどんを買ってよォ~オ!』


『もうっ、またそんなワガママ言っちゃって、あなたねぇ……今大会こんたいかいにおいて何故なにゆえこのように屋台や出店を多く招集し、数多あまたの食材を使用して軽食等・料理を提供しているのか……その意味するところを理解しておいでか?』


『も、もちろんだよう! それすなわち――〝試合で使用した食材は、大会関係者一同が無駄なく使用しております♡〟――これにもうす』


『ようした……存分にしょくすが良い、息子よ』


有難ありがたき幸せ……』


(ぶっ壊れてる……)


 いやあの、気弱な奈子のツッコミは心の声なので、大目に見てください……。


 さて、そんな壊れ……盛況しているホール内を見て絶句する奈子に、晃一は腕組みしながら得意げに語り掛ける。


「フッ、驚いているようだな、奈子……だがこれこそが、サッカー(袋詰めする方)の生み出す熱、この競技の人気の証左しょうさ……見ろ、人々の、ファン達の熱狂を。これが、キミが飛び込んだ――サッカーの世界なのだ――!」


「そうなんですか。ぶっ壊れてますね」


「フフッ、奈子! フフフッ、奈子!!」


「だから変な感じで人の名前、連呼しないでくださいってば……」


 あっその……敬語! 気弱なヒロイン、ちゃんと敬語なので大目に見て!


 と、教え子とコーチが気心の知れた(出会って一日)やり取りをしていると――通路端つうろはしのスペースに設置されているベンチから、聞いたことのある声が響いた。


『あらァん? ウフフ、そこにいるのは一回戦突破のダークホース女子高生……奈子ちゃんじゃないの♡』


「うわー、喋り方だけで誰か分かる……馴染なじんできたみたいで、やだな何か……」


 さすが未来の〝サッカーの女王〟、一聴いっちょうしただけで把握はあくしたのか――渋々とそちらの方を確認すると、そこには恐るべき四天王――《色欲の大罪》イロカが焼きそばを手に、そして《卑劣なる蛇助》がフランクフルトを手に、『クックック……』とそれぞれ意味深いみしんな笑みを浮かべていた。


 そんな二人に、やや気疲れしている奈子が、仕方なく対応する。


「あ、えっと……お疲れ様です。そちらも試合、終わってたんですね……あー、その……どうでした? ってわざわざ聞くのも変ですけど……」


「フフッ……愚問ねェ♡ 結果なんて、トウゼン――」


「イヒヒッ……やれやれでゲスねェ……♪」


 クスッと妖艶ようえんに笑うイロカと、いやらしい笑みを浮かべる《卑劣なる蛇助》――二人がほぼ同時に答えを発した。


「普通に負けたわよォん♡」

「文句なしの敗北でゲス♪」


「はい? ……え、えええええ!? ちょ、待っ……あ、あんなに意味深な感じで登場して、(変な)自己紹介までして……四天王とか言って一回戦敗退!? 冗談ですよね!? まあ今日ずっと冗談かと思い続けてますけど!」


 あっさりと告げられた結果に、さすがの奈子も冷静さを欠くが、二人は相変わらず『クックック……』と意味深に笑い続けている。


 すると晃一が、サングラスを指先で軽く持ち上げつつ、説明した。


「奈子、試合結果と大まかな展開なら、俺がチェックしているぞ。まず《色欲の大罪》だが……〝なんかよく分からんが妖艶で色っぽい〟というだけで、サッカーの実力は別に普通なので、普通に負けたらしい」


「オイ! あっいえ、すみません……いえじゃあ何の四天王なんですか!? まあとりあえず名前だけでも……みたいな話ですか!?」


「そして《卑劣なる蛇助》は対戦相手へと、試合中に恐るべき妨害工作ぼうがいこうさくを仕掛け……反則で普通に負けた。以上だ」


「バカ! ……訂正不要ていせいふようですね、もうっ、バカ! 順当じゅんとうな結果だからこそ開いた口がふさがらないですよ、卑劣をつつしんでくださいよ、もう!」


「ちなみに《鉄壁の守護者》は、先ほどの奈子との試合で負った傷が深く、病院送りだ。正直、喋り方が面倒くさいから助かるな」


「あの試合のどこに怪我する要素が!? 最後、勝手にもんどり打って倒れてたことくらいしか心当たりないですけど!?」


「そして、四天王最後の一人……ヤツは――」


 晃一が続けて言及しようとした、その人物は――直前、奈子たちの前に姿を現した。ただし、その姿は体中、傷だらけである――!


「うっ、ぐっ………ぐふっ!」


「えっ、あなたは確か……《激情の大門》さん!? うわー覚えたいわけじゃないのに自分の記憶力が憎い……ま、まあとにかく、大丈夫ですか?」


「こ、これしきの傷、なんということもないでごわす……が、出来ることなら奈子ちゃんの手で優しく介抱かいほうしてもらえると、ありがたいでごわすっ……!」


「ええ~……う~ん……とりあえず、何で怪我してるのか、状況とか理由を確認してからで良いですか……?」


「ふふ、さすが一回戦突破の美少女ダークホース女子高生、慎重しんちょうでごわすな……さて、も、もちろん理由は……サッカーの試合でっ……うぐう~っ!」


 いかにもくやしそうなうめき声を上げる、《激情の大門》が明かした顛末とは――


▼激戦の回想▼


 サッカー台に並べられた商品を手に、豪快さが売りの《激情の大門》は、レジ袋を目掛けて突撃する――!


『うおおおおリスクを恐れる者は何も得られんでごわす! 全てをパワーに注ぎ込み、ひたすら商品を詰め込みまくるでごわす! 〝激情〟の恐ろしさを知れぇぇぇぇい!』


『商品、死亡確認ぐっちゃぐちゃ! 《激情の大門》失格! 失せろカスが、二度と四天王を名乗るな!』


『ご、ごわぁぁぁぁぁぁっす!!?』


 そして自ら弾き飛ばされた《激情の大門》は、もんどり打って倒れ、ボロボロになったのである。


▲回想終了▲


「おいどんのフィジカルでなければ、おいどんも《鉄壁の守護者》と同じく、間違いなく病院送りになっていたでごわす……恐ろしい相手でごわした……! さ、というわけで奈子ちゃん……どうか手厚い看護を――」


「そうなんですか、なるほど……介抱はお断りしますね」


「な、なぜでごわーーーっす!? ぐふっ」


 再びもんどり打って倒れ、完全にダウンする《激情の大門》――良かった、静かになって(余談)


 こうして四天王、全滅と相成あいなった。これが、これが〝サッカー〟の大会。恐るべき実力者とて、生き残る事さえ容易よういでない、生き馬の目を抜く戦場なのだ――!


 そんな容赦も情けも無用の世界に、何となく疲れ気味の奈子の耳へ、呵呵大笑かかたいしょうと大声が響く。


『がーっはっはっは! アンタが一回戦突破したっつう噂のダークホース女子高生かぁ~!?』


「私コレ、振り向かず無視しちゃダメですか?」


『振り返ってぇ~! そんなつれないこと言わないで! 登場させてくださいよお願いしますぅ~~~う!!』


「はあ……ヤダな、もう……わかりましたよ……」


 何度目かの渋々、奈子が未来の〝サッカーの女王〟たる余裕か、ゆっくりと振り返ると――そこに現れた者の正体とは――!?


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