第一章 : 私の印象
「そういえば、レイさん、私に対してどんな印象があります?」
記者の人に言われたことがずっと気にかかっていたのだ。
仁藤さん......と、言ったっけ。
とにかく、彼の言っていた”あなた、純白の奇跡、そのほかに何て呼ばれてるか知ってますぅ?”という言葉がずっと刺さって抜けない。
そして、私が本当に両親の子なのか、という問いも。
いや、生まれたときの写真も動画も見たことあるから、両親の娘であることに違いはないはず。
「どうしたのぉ急に。」
「いや、いいんで、とにかく教えてください。」
なんて思われてるかが分かれば、この言いようのないモヤモヤも少しは解消されるかもしれない、そう思う。
「んー......可愛い、綺麗、逞しい......かな?あ!後は、料理が上手!」
「はぁ......貴方に聞いたのが間違いでした。」
レイさんの答えを聞いてるとなんだかばかばかしく思えてきた。
私は悩んでも答えが出ないと思い、一旦悩むのを放棄することにした。
レイさんは、私の反応を見て「えぇ~?」とわざとらしく肩を落とした。
「ひどくない?ちゃんと褒めてあげたのに~。」
「はいはい、ありがとうございます。」
適当に受け流すと、レイさんは少しだけ口を尖らせたあと、ふっと笑う。
「まぁいっか!」
そう言って、ぱん、と手を一度叩いた。
「じゃあさ、そろそろご飯にしよっか!」
「ご飯?」
「うん!今日ねぇ、ちょっといい感じにできたんだよね~。」
どこか自信ありげな声。
そういえば、さっきからほんのりいい匂いがしていた気がする。
「……もしかして、さっきから準備してました?」
「そーそー!結ちゃん帰ってくる時間くらいに合わせてさ!」
得意げに胸を張る。
「ほらほら、冷めちゃう前に来て!」
そう言って、さっさとリビングの方へ行く。
私は少しだけ呆れながら、その後を追った。
リビングの扉を開けた瞬間、ふわっと香ばしい匂いが広がる。
「……わぁ。」
思わず声が漏れた。
テーブルの上には、湯気の立つ料理がいくつも並んでいた。
焼き色のついた肉に、彩りのいい山菜。
それから、見たことのないけれど食欲をそそるスープ。
「どう?いい感じじゃない?」
レイさんは椅子に腰かけながらにやっと笑う。
「三ツ星シェフもいいけど、こーゆー料理の方が安心するなぁ。」
心の底から出た、正直な感想だった。
「三ツ星シェフ?何それ!ま、今日は俺がメインシェフだからね!」
「気にしないでください笑 それは...味に期待していいやつですか?」
「もちろん!」
即答だった。
私は席に座り、手を合わせる。
「いただきます。」
一口、肉を口に運ぶ。
じゅわっと広がる旨味と、ほんのり効いた香草の香り。
「……美味しい。」
思わずこぼれる。
するとレイさんは満足そうに頷いた。
「でしょ?」
「でも、ちょっと山菜飽きました。」
「そんなこと言わないの!」
ちょっとぷりぷりしながら笑うその顔があまりにも嬉しそうで、私も少しだけ笑ってしまった。
さっきまでのモヤモヤが、少しだけ軽くなった気がした。




