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私は悪を犯す、故に、世界は救われる  作者: 神月佑奈
第一章

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第一章 : レイ

「へぇ~結構強力な結界だねぇ。やっぱり救世主ちゃん守るためだもんなぁ。神様たち頑張っちゃうよねぇ♪」


やはりこの狐目の青年は私のことを救世主ちゃんと呼んでいる。


「あの、なんで私が救世主だって知って...?」


すると、狐目の青年は笑いながら答える。


「そりゃぁこんな救世主の園に住む人は救世主ちゃん以外いないしねぇ。」


そして、ひとしきり笑った後、不思議な雰囲気を醸し出しながら付け加える。


「それに......こんなに綺麗な黒髪にこげ茶の目なんてこの世界じゃ救世主ちゃんただ一人だと思うよ。」


そう言う彼の目は深海のような濃い青で、その綺麗さについ目を奪われてしまった。


つい目をそらせず見惚れていると、狐目の青年はパッと明るい雰囲気になり言う。


「まぁまぁ!とりあえず、俺お腹空いたし、なんか食べたいなぁ!今日取った魔物はどうするの?」


私はふいと目を逸らし答える。


「半分は、干し肉にしたり燻製にしたり、するつもりです。」


「じゃあ今、干し肉も燻製も、料理も作っちゃってよ!とりあえず、食べながら説明するし!」


丁度私も色々と聞きたいことがあったので、小屋の中へ案内する。


扉を開けると、青年は興味深そうに辺りを見回した。


「おぉ~、ちゃんと残ってるんだねぇ。」


棚に並ぶ道具や、壁際の本の山を見て、感心したように頷く。


「ほんとに高度な保存魔法だ。ここまで高度なのは神のみぞ可能な域!」


青年はずかずかと中へ入り、椅子に腰掛けた。


「いいねぇこの雰囲気。落ち着く。」


完全に自分の家のような態度だ。


「……ちょっと待っててください。今準備します。」


私は台所の方へ向かい、さっき解体してきたアゲーダの肉を取り出す。


まずは干し肉用。


薄く切った肉に塩をすり込んで、冷蔵庫に入れる。明日になると脱水しているので、紐で吊るし、乾燥させる。


燻製に関しては、乾燥させる段階で小さな燻製箱に木片を入れて火をつけ、肉を並べるので今やることはない。


「手慣れてるねぇ。」


後ろから声がする。


振り向くと、青年が台所の入り口にもたれかかって見ていた。


「日記に書いてあったので……」


「なるほどなるほど。そっかぁ過去の救世主ちゃん達は日記残してたんだねぇ。」


彼は楽しそうに頷く。


「じゃあ今食べる分は?」


「ちょっと待ってて下さい。焼くので。」


フライパンを火にかけ、脂身の部分......牛脂のようなところを焼き、油を引いたところで厚めに切った肉を乗せる。


ジュウッ、と音が鳴り、すぐに香ばしい匂いが広がった。


「おぉぉぉ……!」


青年の目が輝く。


「数日ぶりのまともな肉の匂い!」


「数日……?」


思わず聞き返す。


「うん。山の上って食べ物少ないんだよねぇ。」


さらっと言うが、よく考えると変だ。


この辺は高い山の中だ。簡単に来られる場所ではない。


「……あなた、どうやってここに?」


肉をひっくり返しながら聞く。


すると青年は少しだけ首を傾けた。


「んー?」


そして、悪びれもなく言う。


「途中までは瞬間移動で来たけどー結界の近くになると来れなかったんだよねぇ。だから、歩いて?」


「……」


思わず手が止まる。


ここは山の上の方。


こんなところまで歩いてきたというのか。


「まぁまぁ、細かいことは後で後で。」


青年は椅子に座り直し、机を軽く叩く。


「それよりご飯!」


私は小さくため息をつき、皿に肉を乗せ、鍋に残っていたズッパを底の深いお皿にそそぐ。


「どうぞ。」


「いただきます!」


青年はすぐに肉を一口かじる。


「……!」


そして一瞬固まったあと、顔を輝かせた。


「うまっ!」


「本当ですか?」


「うん!めちゃくちゃうまい!」


彼は大げさなくらい嬉しそうに食べている。


そして、あっという間に一枚食べ終わった。


「いやぁ~、救世主ちゃん料理上手だねぇ。」


「普通だと思いますけど……」


「いやいや、この世界だとかなり上手い方だよ。てか、このズッパ、バフついてるよね?」


バフってなんのことだろうと思っていると、それを察したのか説明してくれた。


「あぁ、バフっていうのは能力を一時的に強化すること!パッシブスキルになんかない?」


「そういえば......料理への効果付与2倍ってありました。」


「それだよそれ!この辺の結界内の植物を使ったのかな?」


彼はワクワクしながら考察している。

最初は少しミステリアスな感じがしていたけれど、食べ物のことになると目がないのだろうか。


二枚目の肉を取りながら言う。


「てか、本当に美味しいなぁ。この世界、調味料少ないのに。」


そう言ってから、ふと思い出したように顔を上げる。


「あ、そうそう。」


そして、にこりと笑う。


「自己紹介まだだったね♪」


私は椅子に座り、彼を見る。


青年は軽く手を胸に当て、お辞儀する。


「俺はレイ。」


狐のように細い目をさらに細める。


「この世界のこと、ちょっとだけ知ってる通りすがりの人。」


絶対に違うけれど、彼を鑑定しようとしてもほとんどがunknownで見ることができない。


「よろしくね、救世主ちゃん。」


青い目が、静かにこちらを見ていた。

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