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私は悪を犯す、故に、世界は救われる  作者: 神月佑奈
第一章

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第一章 : 狩り

あれから数日。

生活の為に魔法を使ったり、木とかに練習していたらある程度しっかりと魔力量を調節して魔法を使えるようになった。


「にしても、そろそろ食料もつきそうだなぁ...持ってきた食料はまだ使いたくないし...」


そう、ウェルナ様が用意してくれたであろう干し肉やパンがそろそろ底をつきそうなのだ。


もってあと2日、というところだろうか。


「動物とか魔物...狩ってみるか...」


そう、日記によるとこの辺には動物とか魔物がそこそこいるらしいのだ。


先人たちもみな、狩ることで命をつないできたらしい。


ただ、まったくこの辺ではそういった類のものを見なかったのでなぜだろうと思っていると、ジョーファーという人の日記に、”どうやら結界のようだ。”と書かれていて納得した。


小屋に近づいたときに何かをすり抜けた感覚があったのは結界を通ったからだったのか。


「確かあの結界からここまでは大体徒歩5分か……500mないくらい?」


遠すぎず、近すぎず。

ちょうどいい距離だ。


とはいえ。


「……狩り、か」


小さく呟く。


魚釣りはしたことがある。

でも、動物を仕留めるのは初めてだ。


生きるためとはいえ、少しだけ胸が重くなる。


しばらく考えたあと、立ち上がった。


「生きるため、生きるため……やるしかないよね」


食べなければ、生きられない。


それはこの世界でも、地球でも同じだ。


日本だって昔は狩りをしていたし。

家畜として飼われるようになったから目の前で殺戮を見ていないだけ。


弱肉強食なのはどこも同じだ。


小屋の中に戻り、準備を始める。


「杖...と、ナイフとロープと、袋は無くて大丈夫だもんね。マジックボックスに入れればいいもん。」


持ち物を肩掛けバッグに入れ、外に出る。


朝の空気は澄んでいて、少し冷たい。


山の風が静かに流れている。


「北……北……」


太陽の位置と日記の地図を見比べながら歩き出す。


そうそう、ステータスのブックマーク機能が凄い便利だった。

この地図もステータス上で見れるんだから有難いことこの上ない。


丁度結界のあたりまで来た時、また何かを通り抜けた感覚がした。


「結界、通り抜けたなぁ」


ここから先は、安全地帯ではない。


それを強く意識し、杖を握り直す。


魔力の流れを軽く確認する。


魔力が巡っている感覚は、十分ある。


「……よし」


深呼吸。


しばらく歩いていると、ガサッと右の茂みが揺れた。


反射的に杖を向ける。


「ウィンドカッ......」


言いかけて、止まる。


茂みの奥から顔を出したのは。


小さな、鹿のような生き物だった。


大きさは大型犬くらい。


耳が長く、背中に白い斑点がある。


「……動物?」


魔物……ではなさそうだ。


急いでステータスに保存した図鑑で調べてみると、リトルディアーと書かれていた。


やはりただの動物で、こちらから危害を加えない限り攻撃してこないそうだ。


ただ、一般的な大きさは地球の鹿と同じくらいらしく、このリトルディアーはまだ子供のようだ。


目は警戒しているが、敵意はない。


ただこちらを見ている。


胸が少し締まる。


「どうしよう、攻撃できないよ...」


そのままお互い動くことなく、体感5分程だろうか、見合っていた。


ここで殺さないことには、私も生きてはいけない。


けれど、まだ歩き始めたばかりだし、何もここで殺すわけにはいかないじゃないか。


「杖……向けちゃって、ごめんね」


小さく呟く。


私は杖を下ろし、その場を後にした。


結局私は罠をいくつかつくり、成熟した生き物が捕まるのを待った。


すると、幸いなことに大人の魔物が捕まったので、殺して食べることにした。


魔物に向け、魔力を集め、魔法を放つ。


狙うなら、やはり風魔法だろう。


「.....ウィンドカッター」


ヒュッ。


鋭い風が一直線に走る。


次の瞬間、ザシュッと音を立てながら魔物が小さく跳ねて、倒れた。


私はしばらく動けなかった。


胸が早く打ち、手は少し震えている。


ゆっくり近づくが、魔物は動かない。


「……」


目を閉じ、短く頭を下げた。


「いただきます」


魔物とはいえ生き物なので、最大限の敬意を表す。


私はナイフを取り出し、日記に書いてあった通りに血抜きを始めた。


山の風が、静かに吹いている。


この世界で生きるということ、その重みを、初めて実感しながら。



その時私は知らなかった。


「へぇ~やっぱりお人よしだぁ。大司教様の言うとおり、接触に来て正解だったなぁ。」


狐目の青年が既にここへ来ているということに。

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