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私は悪を犯す、故に、世界は救われる  作者: 神月佑奈
第一章

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第一章 : お風呂

「ふぅ、食べた食べた。」


夜ごはんが終わった後、久しぶりにゆっくりする時間ができた。


「こんなにゆっくりしたのはいつぶりだろう。」


地球では、いつもずっと走り続けていたからなぁ……


今、異世界にいること、そしてそれをちゃんと理解して適応して今こうして過ごせていること。


自分がここまで冷静であることに恐怖を感じると同時に、人間ってしぶといんだなと驚きも覚えた。


これからの私に、何が起こるのか、何も分からない。


先見の力も貰っておけばよかったかなぁなんて思いながら、日記を開く。


「うーーーん、こういう日記って何書けばいいかいまいちわかんないなぁ。」


過去の救世主の人達の日記を見ると、結構書いてることがまちまちで、どうしていいか分からない。


「きっと、私より後にも救世主は来るんだよね。その時の為に、今日わかったことを書いておくべき、かな。」


私はペンを走らせた。


いつか、これを読んだ人の力になるように。


暫くして日記を書き終えた。


「ふぅ、これでいいかな。」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


こんにちは旭月結です。

救世主としてウェルナ様に召喚されました。

とりあえず今日は魔法の練習してご飯作ってって過ごしました。

「魔法操作Ⅰ」という本がわかりやすくておすすめです。

ステータスはタップすると詳細見れます。

おすすめのレシピはレシピ本に書いておくので是非作ってみてください。

この小屋は多分先人の人たちのお気に入りが沢山つまった場所なのかなと思います。

人が過ごしてきた温かみが、寂しいと嘆かなくて済む理由な気がする。

とりあえず頑張って生きます。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「そういえば、お風呂どうしたらいいんだろう。」


言った瞬間、はっとする。


「そういや、お風呂、見てないな。」


立ち上がり、ランプを手に取る。

小屋の中を改めて見回す。


昼間は慌ただしくて、

必要なところしか見ていなかったけれど、よく見たら部屋の奥に、もう一つ扉がある。


「ここかな……?」


そっと開ける。


ギィ、と小さく軋む音。


中は思ったより広かった。


石造りの床。

壁には木の棚。

少し高いところにある窓からは山々が見える。


そして中央には――


「……お風呂だ!」


大きな木製の浴槽。

浴槽からは微かにヒノキのような香りがする。


一人で入るには少し大きいくらい。

縁は長年使われてきたのか、少し丸く削れている。


「まさかこんないい物があるなんて……」


ほっと息が漏れる。


ただ。


「……お湯は?」


蛇口は見当たらない。


水桶と、鉄の釜。

それと――


浴槽に刻まれた、丸い紋様。


「これ、魔法陣……?」


しゃがみ込んでよく見る。


文字のようなものが彫られている。


横の棚を見ると、

小さな木札が置かれていた。


そこには、短く書いてある。


《青の魔法石には水魔法を、赤の魔法石には火魔法を注いでください。》


「……わぁ!すごい!」


至るところまでが魔法でできていて、凄く楽しい。


早速試してみようと、魔法石に向かって杖を構える。


「ウォータースプラッシャー」


すると、今までは水がまっすぐ勢いよく出ていたのに、魔力に反応して魔法石が光ったかと思うと水が太い糸のようになって魔法石に注がれた。


「わっ」


思ったより勢いが強い。


魔法石に魔法が注がれるにつれ、色が濃い青からライトブルーに変わっていく。


色が変わり終えるのに、数分もかからなかった。


「凄い……」


次は火。


今度は赤の魔法石に向けて魔法を発する。


「ファイアーボール」


先ほど同様糸のようになるのかと思いきや、一度ファイアーボールが出てきて、その後魔法石にまるで掃除機のように吸い込まれていった。


「おぉ……」


魔法石に魔法を貯め終えると、輝きだし何処からともなくお湯が沸き始めた。


本当に、普通にお風呂が作れる。


じわじわと湯気が上がる。


木の香りと、温かい空気。


「いい香り……」


少しだけ、胸が緩む。


やっぱりお風呂は日本人にとって大切な時間だと思う。


「さて……入るか!」


服を脱ぎ、付け備えのシャンプー、コンディショナーやボディーソープを使って体を洗う。


そして、恐る恐る足を入れる。


「……あったかい」


思ったより、ずっと安心する温度。


体を沈めると、

今日一日の疲れが一気に浮かび上がってくる。


「はぁ……」


息が抜ける。


天井を見上げる。


木の梁。


静かな夜。


温かいお風呂に忘れそうになるけれど、窓から見える風景が異世界という現実に連れ戻す。


遠くで、虫のような鳴き声。


「本当に来ちゃったんだな……」


なんとなく物思いにふけたくて、お風呂に潜る。


今までのしがらみから凄く遠い所へ来たんだな。


「ま、迎えに来るまでの1カ月はこうしてゆっくりするのもありだよね笑」


お風呂を上がった私は、何故かサイズがぴったりのパジャマを着て、自室らしきところにあったベッドで目を閉じた。

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