第一章 : 異世界初料理と魔法
「レシピ本レシピ本...あ、あった、これか。」
日記に書かれていたレシピ本を探していたが、本棚には無く、というかほぼ日記で埋め尽くされていたので近くの本の山を探していたらあった。
本の山の中から一冊を引き抜くと、思ったより軽かった。
分厚く見えたのは、紙がしっかりしているかららしい。
ぱら、とめくる。
「おお……ちゃんと料理本だ」
山菜スープ、干し肉、保存パン、燻製、簡易チーズ。
材料も手順もかなり具体的に書いてある。
しかも、横に小さく【★初心者向け】【火加減注意】【三日保存可】とメモがある。
「優し……」
ただ、材料にはスライム、とか、バイソン、とか、山月草、とかちょっと見覚えの無いものが沢山書いてある。
レシピ本と共に置かれていた副読本のようなものには、材料やそれを取れる場所の豆知識のようなものが書かれていた。
山菜は朝に採ると柔らかい
谷側は風が強い
火は夜に目立つので注意
など、生活メモです!みたいな箇条書きだったけれど。
「よし」
レシピ本を閉じる。
「まずは火起こしからだよね」
ページを開き直す。
【最初の手順】
① 小枝を細く折る
② 乾いた葉を下に敷く
③ 自分が使える火魔法で火を起こす。※無理な場合は自力で火起こしファイト
「なるほど、ゲームみたいに魔法で火起こしするわけね」
少しワクワクしながら、木材の束を持つ。
暖炉の前へ行き、木をくべる。
「……よし。やってみよう」
確か自分が使える火魔法は、”ファイアーボール”であったから、唱えればいいのだろうか。
「ファイアーボール」
すると、どこからともなく大きな炎が出てきて、暖炉にくべた木は勢いよく燃えていく。
「きゃっ。火力強すぎる!!」
このままではコンロで火魔法を使って火をおこすことができない。
そう思い、急いで魔法の使い方が書かれた本を探す。
「あった!えっと...?」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
まず最初は杖を使って魔法を使います。
別に杖なんてなくたって大抵の魔法使いは魔法を駆使できるようなのですが、私たちはこちらの世界に来てから魔法を使い始める身なので、杖があったほうが制御しやすいみたいです。
使い方としては、魔法を発動したい方に向けて杖を構え、使いたい魔法の名を唱えます。
上級魔法になると色々詠唱が必要なのですが、とりあえず今は一旦いいでしょう。
魔法を使うにあたり、ステータスに書いてあるMPというものが重要ですが、杖の方が消費量が少ないです。おそらく、素手の時の1/10くらいじゃないでしょうか。
まぁ、その分威力は落ちるんですけどね。
MPは4時間寝ると7割回復します。
全回復の為には10時間寝てくださいね。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「なるほど、杖...!これから生き物を倒すときも杖を使えばさっきみたいな暴発は防げるのね。」
まさか杖みたいなチートアイテムがあると思っていなかった私は、杖の存在にありがたみを覚えつつ、杖を探した。
「あった!これだ杖!」
その杖は、ご丁寧に私の名前が彫られた状態で綺麗な箱に入れられて保管されていた。
「じゃあせっかくなんでコンロに火でもつけてみますか!」
「ファイアーボール」
すると、さっきより明らかに威力が低くなった状態で魔法が発動し、ちょうどよい感じにコンロに火がついた。
「ついた……!」
思わず声が弾む。
「……いけるかも」
鍋に水を入れ、レシピ本の一番簡単な山菜スープを作る準備をする。
材料は水に、ゾモスと呼ばれる美味しい出汁が取れる山菜と、具材となる乾燥山菜、それと
塩少々。
これらの山菜は、庭に生えていたもので、鑑定眼が食べられるか食べられないか判断してくれた。
汁物としては本当にシンプルだが、お吸い物のようで大満足だ。
ぐつぐつ、と音がして、湯気が立つ。
「……なんか、ちゃんと異世界生活始まったんだなぁ。」
今はまだ、派手な魔法も、壮大な戦いもない。
まずは、
火を起こす。
水を沸かす。
食べる。
それだけ。でも、この広大な山の中で、一人、杖を使い魔法を駆使する。
初めての連続で怖くもあるけど、先人の知恵があるからきっと大丈夫だろう。
「とりあえず、食べるか!」
初めて異世界で作った汁物は、ちゃんと美味しかった。




