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#18『黄昏』

メアは声にならない叫び声を上げ、そのまま目の光を失い、全身の力が抜けていった。


「メア……………?」


(ハハッ……いや、縁起でもないけど、一度殺そうとした人に感謝されるなんて思わないでしょ、普通。)

(ルチルは、この街の遥か遠くにある……その、結界ってやつを超えたことがあるんだよね。)

(アタシも……いつか………その…………)

(一緒に、行ってみたい。)

(っ!!いいの!?)

(じゃあ、約束!)

(あぁ、約束だ。)


短くても、大切な時を過ごした仲間が、今目の前で溶けていく。それはメアが息を引き取ったのを確認すると、メアへと伸ばした触手を無慈悲に砕き、メアだったものは聖堂の床へと真っ逆さまに落ちていった。


「………」


人造人間の身体は、人の身体の様には安定してない。その身体を操る組織が死ねば、人造人間そのものの体も溶けて、最後は水たまりになる。ドロドロに溶けたメアの体は、跡形も無く水たまりへと消えていった。


「約束……したよね………一緒に…………行こうって……………」


『どうやら、人の体より脆いらしいな。その人造人間ってのは。1つ面白いことを教えてやろう。カイヤの造る人造人間は、本来私がこの私の身を犠牲に作られる予定だった。人の命を絶命させ、その死体を細胞に乗っ取らせるんだ。あんな倫理観のないカスの下、さっさと離れて正解だったな。おっと、貴様の地雷に触れたか?逆上して襲い掛かりたいなら好きにし給えよ。貴様もすぐに、コイツの元に送ってやるからな。』


「…………」


『どうした、ついに抵抗する意思すらも潰えたか。これだから人の繋がりというのは。仲間を想う心こそが、返って自身を傷付けてしまう。あぁ、可哀想に…貴様は誰にも知られず、ただ上空に佇み何もせずただ見ていることしかできない愚か者に看取られることも無く、ここで生涯を終えるのだ。』


ルチルは、後頭部の管を伸ばし、エネルギーを蓄える。ただ、蓄え続ける。


『まだ抵抗する意思を見せるか。良いだろう。ならば貴様も、無様に葬ってやろう………なんだ………貴様、何をしている……?』


ルチルの髪が根本から赤く染まっていく。ルチルの体温が少しずつ上昇していく。


「…………」


ルチルの口から微かに白い煙が上がる。やがてその煙は、火山灰の隙間から今にも吹き出そうなマグマの様に、全身から沸き立っていた。


『貴様、何をするつもりだ?』


それはルチルに問いかける。ルチルは答えることもせず、絶えずエネルギーを体内に蓄え続ける。やがて髪が真紅に染まる。全身から出る白煙は、少し黒煙が混ざるようになる。

ルチルはガントレットを構え、ガントレットに管を通す。すぐに満タンになったガントレットに、絶えずエネルギーを注ぎ続ける。ルチルが管を抜く頃には、ガントレットは膨大な熱を帯び、表面は赤く光り輝いていた。


『貴様正気か……?そんな事をしたら貴様も死ぬぞ……!』


ルチルは跳躍準備の態勢に入る。


『まぁいい。そんな姿になったとて、貴様一人に手こずるような私では………!?』


刹那の間、それが言葉を言い終えるまでもなく、爆発音が聖堂内に響く。それが認識出来ぬ程、音を置き去りにする程の速度で、ルチルはそれに急接近した。それの目に映る景色には、左目から蓄えきれなくなったエネルギーが、身体の熱で燃え上がり、もう片方の目から、涙を零すルチルが居た。


挿絵(By みてみん)


『なっ……!?』


それが触手を伸ばすよりも遥かに速く、ルチルの拳はそれの顔面に命中し、そのままそれは地面に叩きつけられた。


『ぐっ……!貴様……!』


それが言葉を発する間もなく、ルチルは地面に勢いよく降下し、そのままそれを壁に突き飛ばした。


『ぐぁっ……!!!』


『このままでは…………かくなる上は!!!』


それは触手を全身に纏うように伸ばすと、そのままルチルへと急接近する。だが、その抵抗もむなしく、それが纏う触手はルチルに砕かれ、そのまま宙に飛ばされる。ルチルはそれの真下へと着くと、そのまま真上に飛び、聖堂のステンドグラスを割り、それを大空へと飛ばす。上空から眺めていたヤグルマは、咄嗟にそれをかわす。


「あの姿は………まさか、ルチルさん………?」


天高く昇った2人は雲の中へと飛び込む。突き飛ばされたそれが空中で静止すると、再生を立て直し、ルチルを探す。


『くそっ……!何処へ行った……!』


見渡すのも束の間、それの真上から雲越しに赤い光が指す。それは再び触手を纏うも、抵抗虚しくルチルの拳を身体に受ける。それは触手を伸ばして抵抗しようとするが、ルチルの風圧に圧されて伸ばした場所から粉々に砕けていった。地面が少しずつ近付いて来る。それは抵抗することも出来ず。ただ地面に強く叩きつけられるのを待つことしか出来なかった。

数刻後、再び聖堂に轟音が響く。その衝撃で、聖堂のステンドグラスが粉々になる。ルチルはそれを打ち付けた後距離を取り、ガントレットのエネルギーを貯め始める。それは残りの力を振り絞り、何とか態勢を立て直す。


『こいつ…………狂ってやがる…………貴様、自分の命が惜しくないのか!これじゃあまるでテメェが災害そのものじゃねぇか!!』


それはルチルに問いかけるが、ルチルには何の言葉も届かない。


『くっ………こうなったら……!』


それは触手を身にまとった後、触手を枝分かれさせ続け、やがてそれは、一匹の翼竜の様な姿になった。


『コノママクタバルワタシデハナイ!!』


それは徐々にスピードを上げ、ルチルの方へと真っ直ぐ向かう。ルチルを掻っ切らんと、その爪を伸ばす。

ルチルはガントレットのエネルギーを貯め終わると、そのエネルギーを一括で全て使い、光の速度で翼竜に接近する。


『クタバレ!!ルチル!!!!』


近辺一帯にものすごい轟音が響く。それは遙か上空で、戦いを傍観するヤグルマでさえ、うるさいと感じるほどだった。


聖堂に砂埃が舞う。砂埃が晴れ、底にあったのは、聖堂の真ん中、一人佇むルチルと、全身瓦礫に埋もれ、動かなくなったそれの姿だった。


暫くの間、沈黙の時間が流れる。ルチルの燃えるように赤くなった髪は、やがて燃え尽き、灰色に変わっていた。そのままルチルはガントレットをその場に落とし、前から倒れ、意識の奥、深いところへと沈んで行った。


           #18、おわり。

今回の話も最後まで読んでいただきありがとうございます。


私の夢は、この世界の映像化。即ち、アニメ化でございます。


一生涯を賭けこの作品を完成させる意気込みですのでどうか応援の程宜しくお願い致します。


もし、この作品が気に入っていただけたのであれば、ブックマーク、お気に入り登録等、宜しくお願い致します。


また、感想やレビュー等も大変励みになる上大歓迎ですので、宜しければ書き込んで頂けると幸いです。


それでは、また次回。

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