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#14『母親』

ルチルの決断に、メアも頷いた。


「心強い返事、感謝します。では、3日後に、私の下に来てください。私はこの館の入り口で待っていますので。」


ヤグルマはそう言うと、何処かへ消えていってしまった。


「ふぅ……さてと、俺はあんたらを止めないって決めた。それを破るつもりは無い。そういやルチル、暫くカイヤに会ってないんじゃねぇか?………最後になるかもしれねぇからな。俺はいつも通り作業部屋に居る。なんかあったら来い。」


暁は開けたままにしていた客間の入口から出ると、扉を軽く中途半端に閉め、作業部屋に戻って行った。


「……」


2人の間に流れる沈黙を裂くように、メアが口を開く。


「えっと……とりあえず、カイヤに会ってきたら?」


「メアは行かないのか……?」


「行かないってか………合わせる顔がないっていうか………」


「何かあったの…?」


「そういや話してなかったっけ。アタシ、カイヤの研究室で生まれて、カイヤと対面した時……その、カイヤに斬りかかったの。あっさり気絶させられたけど。」


「そっか………分かった。じゃあ行ってくるね。」


「………うん。」


ルチルは席を立ち、部屋を後にする。


「待って……!」


ルチルがドアノブに手をかけようとした時、メアがルチルを呼び止めた。


「……その、やっぱり私も行く。」


ルチルは掛ける言葉を少し考え、メアの判断に頷いた。


「分かった。じゃあ一緒に行こう」


2人は部屋を出て、館を後にし、生物研究所へと向かった。


〈生物研究所前〉


2人が研究所の前に着くと、それが分かっていたかのように、カイヤが立っていた。


「妙な胸騒ぎがしたと思ったら。久しぶりだねぇ。2人とも。」


「お久しぶりです!主!」


ルチルが元気良く言葉を投げる傍ら、メアはルチルの後ろで気まずそうにしていた。


「……もしかして、私を襲ったのを未だに引きずってたりするのかい?この娘は。」


「アハハ………えっと……」


カイヤはルチル越しにメアを見つめる。


「安心しなよ。気にしてないから。それに、そうなる可能性もしっかり予測した上で君達を作ったんだ。ダテに生物学者やってないからねぇ。ほら、堂々と胸張って。あんたにはそれがお似合いだろう。」


カイヤの言葉に、少し安心したのか、メアがルチルの陰から出てきた。


「随分ルチルに懐いてるみたいだね。もしかして、もうそういう関係になってたりするのかい?」


「んなっ!!?そんな訳無いでしょ!!大体アタシは………アタシは………………あっ」


カイヤの言葉に戸惑ったメアは言葉に詰まった。


「アハハハハ!なんだい話せるじゃないか。そうだ、立ち話もなんだし、研究室においでよ。今は特に目立った事してないからさ。」


2人はカイヤに招かれ、研究室へと案内された。


〈カイヤの研究室〉


カイヤは2人を招き入れると、水をビーカーに入れ沸騰させ、茶を淹れた。


「人体や人造人体に危ないもんは使ってないから、いつもこうやって茶を淹れてるのさ。中々洒落てるだろ?」


カイヤは2人に茶を出し、自分の分も淹れると、2人と向かい合って椅子に座った。


「さてと、私は特にこれと言って話すこともないんだけどね。ここで毎日研究三昧だよ。」


カイヤは息継ぎするように茶を一口飲む。辺りには茶葉の芳醇な香りが漂っていた。


「あんた達、見ない間に顔つきが変わったねぇ。何かあったのかい?」


2人は顔を見合わせると、ルチルはカイヤの方を向き、カイヤと別れ、暁の館で世話になってる間に起こった事を話した。


「へぇ……神子に会ったのかい…………え?ミコニアッタ………!?あんた達、まさか私が作ったのバレてないだろうねぇ」


「えっと……分かりません……少なくとも、人造人間である事は見破られてるみたいですが。」


「……そうかい、まぁ、あんた達が気負うことは無いさ。全部ワタシの責任なんだから。」


あたりの空気が少し重くなった気がした。


「………そうだ、カイヤ……さん?」


沈黙を斬り裂く様にメアが再び口を開く。


「そんなよそよそしい呼び方はよしてくれよ。家族なんだから、呼び捨てでいいよ。何なら、お母さんって呼ぶかい?……って、これじゃあ近所のおばさんみたいじゃないか。全く……私はまだ若い方と思ってたんだがねぇ……」


「じゃあ……カイヤ、1つ質問がある。」


「うん、なんだい?」


「ルチルはまだ分かるとして、なんでアタシを作ったのか教えてもらってもいい?」


カイヤの表情が、少し暗くなる。


「あっ……その、言いづらかったら無理して言わなくてもいい……よ。」


「いや、どちらにせよ話さないといけなかっただろう。話すよ。」


「といっても何処から話すかねぇ……じゃあ、あそこからにしよう。あれは、ルチルが対峙した竜の遺体を分析していた頃からだ。あれがこの街に現れて以来、研究所はその話で持ち切り、ホント、嫌気が差す位にね。まぁそれはいいんだ。重要なのはそこじゃない。ルチル、メアと戦って、あんたも気づいただろう。」


「……あの竜と、同じ………え、なんで戦ったって………」


「そりゃあ、私を一目見るなり殺そうと斬りかかったんだ。当然、ルチルにもそうしたんだろう?」


「………」


「さっきも言ったが、終わった事だ。話を戻すよ。察しの通り、メアはあの竜と私の人造人間のキメラみたいなものさ。それで、なんで作ったかって話だね。それが残念、私にも分からないんだよ。」


「えっ?分からないって……?」


2人は予想外の回答に困惑した。


「実は、メアを作った時の記憶が全くないんだよ。別に酒を飲んでたわけでもないし、誰かが勝手に作ってたわけでもないんだ。悪いね、何も分からなくて。」


「……いや、大丈夫。ありがとう。」


メアは望んだ回答が得られず、少し考え込む素振りを見せたが、すぐに顔を上げカイヤに礼をした。


「そうだ!君達、動植物には興味ないかね?」


暗い雰囲気を明るく照らさんとする様に、カイヤが2人に問う。


「はい…興味はありますが…」


「そりゃあよかった!折角研究所まで来てくれたんだ!実はここ、飼育室があってね?色んな動物や植物がたくさんいるんだよ。丁度見に行くところだったんだ。一緒に来ないかい?」


「良いんですか?是非!」


「よし!そうと決まれば早速案内しよう。ついておいで。」


そんなこんなで、2人はカイヤと共に1日を過ごすのだった。



〈同刻、暁の館〉



暁は自身の作業を終え、息抜きにベランダで外の景色を眺めていた。すると、ヤグルマが館に戻ってきた。


「よぉ。何か用か?」


「もしかして、私に怒ってたりします?」


「なんでキレる必要があるんだ?」


「……いえ、なんでもありません。忘れてください。」


暁は複雑な自身の心の内を今は奥底に閉まっておくことにした。


「1つ聞きてぇ事があんだが、良いか?」


「ええ、構いませんよ。」


「ルピナスの事だ。」


暁はポケットから棒付きのキャンディーを取り出し、包み紙を開け、飴玉を口に入れた。


「あの娘も魔女なのか?」


「……実は、分からないんです。少なくとも、魔女と何かしらの関わりがあるようには見えますが……」


「そうか。…まぁ、分からないんじゃあしょうがない。本人から聞くしか無ぇな。それも、ずいぶん先の話になりそうだが……」


「何かあったんです?」


「あんたがくれたアレで、一度記憶を抜き取り応急処置はした。それっきり、この館の一室で寝かせてるよ。」


「そうですか。そういえば、お礼を言っていませんでしたね。」


「いいんだよ。どっちみち、俺もあの娘はどうしても気がかりだったからな。さてと、休憩も終わりにして、そろそろ俺は作業に戻るかね。」


「そういえば、普段は何をしてるんですか?」


ベランダから部屋に戻っていく暁にヤグルマが問う。


「……別に、大したことじゃねぇよ。家事や雑用みたいなもんだ。って事で、じゃあな。」


暁はヤグルマに背を向けてを振り、自室に戻って行った。


〈夕暮れ、生物研究所〉


「今日はありがとうござ………えっと……ありがとう」


「いいんだよ、最近は特に目立った事して無くて暇だったから。またいつでも来ておくれ。そうだ、今度来た時は、まあ一緒にケーキでも食べようじゃないか。」


暁の館へと帰っていく2人にカイヤは手を振り見送る。2人が建物の影に隠れるまで、カイヤは手を振り続けた。


「次会えるのは、いつになるだろうねぇ。」


「…日に当たってなかったせいか少し肌が痒くなってきた。早く戻るとしようかね。」


カイヤは手を撫でながら、研究室へと戻って行った。


        約束の日まで、あと2日。

今回の話も最後まで読んでいただきありがとうございます。


私の夢は、この世界の映像化。即ち、アニメ化でございます。


一生涯を賭けこの作品を完成させる意気込みですのでどうか応援の程宜しくお願い致します。


もし、この作品が気に入っていただけたのであれば、ブックマーク、お気に入り登録等、宜しくお願い致します。


また、感想やレビュー等も大変励みになる上大歓迎ですので、宜しければ書き込んで頂けると幸いです。


それでは、また次回。

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