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終末旅行(仮題)   作者: ma-kun
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DAY1、日常の終わりと終わりの始まり


西暦2055年、3月上旬、僕が住む街は田舎の部類に入るところだった。

周りを2000メートル級の山々に囲まれた盆地の中、さらに林や竹林など所々に見え、穏やか、もとい何もないところだったが僕は一緒に過ごせる友達もできて割と楽しく毎日を送っていたんだ。春は花見、夏は川遊びに花火大会、冬は雪遊びなどできたから特段暇なわけでもない少年時代だったと思う、、当時僕は6歳だった、あと一ヶ月で新一年生になろうという時だった。



「もうすぐ一年生だね、ゆうくん!」

そう言いながらいつものように親に見守られながら保育園から手をつなぎ歩いて家に帰る途中、理恵ちゃんはそう言いながら僕の手を引く。

目鼻立ちが整った顔で将来美人なるだろうなと子供ながら思っていた。いずれ大きくなってこの子に告白し結婚したいなと思わせてくれるくらいに可愛くて優しい子だったんだ。

手のひらに彼女の温もりと嬉しさと小恥ずかしさを感じつつ、

「そうだね、楽しみだよ、理恵ちゃんは小学生になったらやってみたいこととかあるの?」

僕がそう聞き返すと理恵ちゃんは待ってましたと言わんばかりの顔をした。

「よくぞ聞いてくれました、私はね?勉強がクラスで一番できるようになって大人になったら学校の先生になるの!」

このように大人になってやりたいことがはっきりしている理恵ちゃんに憧れを抱いていた。

当時の僕は入園時から一人で過ごすのが好きな子供だった、、、

鬼ごっこよりお絵描きを一人で黙々と遊ぶ方が好きないわゆるぼっちだった自覚はこの頃からあった。

それに対し理恵ちゃんはみんなの人気者っていうような社交的な子供だったように思う。

「一人で何してるの?、こっちにおいでよ!」

最初はこの一言から僕らの関係は始まった、いつものように一人で絵本を読んでいた僕に話しかけてきた理恵ちゃんだが僕は「一人で絵本読んでる方が楽しいから」と断っていた。

半年くらいあの手この手で誘ってくるこの子についに根負けし一緒に絵本を見るところから始まり、そしてそれに釣られるようにみんなと遊ぶようになっていったのだった。

この頃からだろう、健気に僕のことを気にかけ話しかけ続けてくれ、夢を語ってくれるこの子にだんだんと惹かれていき、それからというものずっと保育園と休みの日は何をするのにも二人で行動するようになっていた。

理恵ちゃんの希望に満ちた目を見ながら「理恵ちゃんならきっといい先生になれるよ、応援してる」僕がそう言うと理恵ちゃんは「私の夢も大事だけどゆうくんは将来やりたいこととかないの?」とワクワクした目をしながら聞いてくるが、この頃の僕は将来なりたいものとかもなく漠然とこのまま普通に暮らせたらいいなくらいの感覚でいた。

・・・いや、夢ならある、理恵ちゃんとこのまま大人になって一緒に結婚したい。

だけどそれを伝えるのが恥ずかしかった僕は精一杯の照れ隠しで誤魔化す。「僕は、ずっとこのままがいいかな、、、」といった僕の顔はもしかしたら真っ赤だっただろう。この時ちゃんと伝えられなったことを今では後悔している。

そうしているうちにいつもの時間通り家に着いた僕たち、お互いに手を振り別れを告げる。

この時、僕たちがいる世界が狂い始めていたことに感づいたのは翌日保育園で過ごしているときだった。お昼を少し回った頃だっただろうか、その日もいつものようにみんなと遊んでいたんだ。そしてトイレに行きたくなった僕はみんなに伝え、向かう途中職員室の前を通り過ぎようとした時に先生たちが真剣な面持ちでテレビの方を向いていた。なぜかその時の僕はその真剣、というより神妙な面持ちで画面を見つめる様子が気になり少し覗き見していた。

テレビの中でニュースキャスターが報道していたのは戦争に巻き込まれた際に避難するための日本各地にシェルターの建設の完了を知らせるもの、外国ではすでに戦争が起きていること、日本は国防のため安保法の改正並びに核兵器を保有することが国会で可決したことが放送されていた。

この時の大人たちは心のどこかで国同士の諍いのことだから自分たちには関係はないだろうと思っていただろう、、、

「大変ねぇ」とか「ガソリンがまた高くなるのかー」など身近な心配しかしていなかった。実際このニュースを知った僕もこの時は自分には関係ないことだと思い、その場を後にした。けれども現実はもっと残酷なものでこのニュースが流れた三日後、日本もこの戦争に参戦せざるをえなくなったことを知らせるニュースが全国に報道された。

そうした中、国会は急ピッチで核兵器の製造とシェルター建設、自衛隊や警察をも総動員し部隊編成などしている様子などしかテレビで放送されることがなくなった頃、時の首相は日本全国に満20歳から65歳までの男性、女性を問わず国防のため志願した者の家庭にずつ給付金として年に3000万を国庫から支払うというお触れを出した。この報道直後は人の命をなんだと思ってる!など不満が国民全員が思っていただろうが歴史は繰り返すとはよく言ったもので金のため一人、また一人と志願する人が出たことがちらほら街で噂され始めると自衛隊に志願することが国民の義務という風潮ができてしまうのは今となっては仕方のないことだと思う。そんな中各地でデモや暴動が起きたことがニュースで流れ始めるとさすがに僕たち子供でも今いる日本という国が危ない状況だと気づかされる、、、。

けれど当時の僕には何かを変えることはできずついに来てしまう、、、第三次世界大戦の幕開けの日が来たのだ

その日を境に僕の日常は終わりを告げた。


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