プロローグ
春、本来であれば木々が芽吹き花の香りが鼻を燻る季節のはずだけれど今は何も感じない。僕は荒れ果てた街に辿り着いていた。崩れたビル、割れた道路、折れた標識、、、
「今日はここで野営するか、、」
僕のいでたち何もかもが消えて無くなった世界、人の気配も感じさせないこの場所で雨風を凌げそうな建物の残骸を見つけた僕は古い電動バイクのスタンドを立て、砂漠のような大地に腰を下ろし野営の準備にかかる。
寝床を設営し、腰に付けたリボルバーをホルスターごと外した後夜の寒さに備え火を起こし、そばに折りたたみ椅子を設置し暖をとる。
夕方の少し寒さの混じった風を背中に感じながらあの日、僕の日常は突然終わりを迎えたことを思い出す。
ことの始まりは石油資源の減少に伴う国家同士の争いが発端だったそうだ。各国で採れる石油の量のバランスがおかしいととある国が指摘、調査したところ、とある国が独占採掘していたことが判明、その事件により紛争が勃発し激化、第三次世界大戦へと発展するに至り日本も巻き込まれる形となって世界情勢が危うくなり始めた頃、時の日本の国会はあろうことか国防のため、安保法の法改正と非核三原則の撤廃を認める法が可決されてしまった。
そして程なく同盟国だったアメリカなどをも敵対視するようになったり、日本も核兵器を持つようになり各国に緊張状態が続いたある日、和平交渉の為に全196国が同時交渉段階に入った時、各国が自国を優位に立たそうとした結果、核保有国全ての国がそれぞれの独断で核搭載ミサイルを各国へ発射、その結果、日本を含むほぼ全ての国が焦土と化したのだった。
その後戦争はというと、核という切り札を各国が出してしまったものだから自分の国の復興をしなくてはいけなくなり、全世界による不可侵、不干渉を条約として締結し、一応のひと段落を迎えたのだがこの迷惑極まりない戦争の影響は世界の人口を約半分以下に減少させただけでなく、幾つかの国は滅亡し放射線問題、食料問題や戦争孤児、難民問題、、、あらゆる負の遺産を生み出してしまったこの戦争の傷は25年経った今でも解決していない。
かろうじて生き残った政府のトップや技術職の人たちの手により日本はもともとあった農業、工業で再建しつつあるようだけれども今僕は戦争のせいで家を失うことになり、旅をして生活をしているというわけだ。
これはそんな世界で旅をする僕の話、なんてことはないただの僕の人生語りだ、、、。