第四話 「面影」
「(ど、どこだ--------っ!)」
「お、おいっ! 鮎人!?」
「(---------!)」
イの隣からデッキを横切り、鮎人は今自分が見た、
"人影"を目指して全速力で駆けて行く!
「ハッ ハッ---------!」
"ドンッ!"
「--------きゃあっ!?」
「う、うわっ!?」
"ドサッ!"
鮎人が、自分が見た女の後姿を追って
船室へと繋がる階段がある建物の角を曲がると、
突然、そこから飛び出して来た
"何か"にぶつかる!
「い、痛いっ」
「------あっ.... 咲茉・・・っ!」
「な、何ですか~?」
「・・・・」
「あ、鮎人さん?」
突然、角から飛び出てきた鮎人が
自分に覆いかぶさる様にぶつかって来た事に
咲茉は、自分の上にいる鮎人の顔を見上げるが
鮎人の顔を見ると、鮎人は無表情で
ただ自分の首筋の辺りを見ている
「・・・・」
「あ、鮎人さん?」
「・・・・!」
「ど、どうかしたんですか?」
「い、いや、悪い....」
"ザッ!
「・・・・」
鮎人は咲茉に覆いかぶさっていた状態から
無表情のまま起き上がると、
デッキの上にうつ伏せに倒れている咲茉に向かって
手を差し出す
「い、いや....どうしたんですか?
すごい慌てて・・・・」
「い、いや、ちょっと急ぎの用があって------
わ、悪い」
「いいんです-------...」
"パッ パッ"
「(・・・・)」
「私にぶつかった所で所詮、
下民みたいな存在ですから--------....」
「("似てる"....)」
「・・・鮎人さん?」
「え? ・・・あ、ああ?」
「??」
あまり、状況にそぐわない様な
呆けた表情をしている鮎人を見て
撮影用の衣装なのか、眼帯をした咲茉は
きょとんとした表情を浮かべている
「------平気ですか?」
「・・・・! あ、ああ。
そっちこそ、平気か-------?」
「・・・・」
「??」
心配した様子で鮎人が声を掛けると、
咲茉は突然下を向き、俯く
「いえ、いいんです--------...」
「"いい"って何がだ?」
「私なんて、所詮存在自体が
無価値な人間ですから....」
「・・・・」
「鮎人さんが、私の存在に気付いてくれなくて
ぶつかってしまうのも、
無理はないです--------」
「(--------....)」
「(・・・・やっぱり-------!)」
「所詮、私の様な微粒子の様な拙い存在の
雌奴隷には、こんな仕打ちが
相応しいんじゃ無いでしょうか...」
"パッ パッ"
「(・・・・・)」
相変わらず何を言っているか良く分からないが、
自分に背を向け、乱れた衣服を直している
咲茉の後姿を見て、鮎人は、自分が学生時代に
思いを寄せていた
"宏美"の事を思い浮かべる---------
「・・・どうかしたんですか?」
「い、いや・・・」
「-------おかしな鮎人さんですね」
「(・・・・)」
咲茉の後ろを姿を見て、非道く宏美と
似ていると鮎人は思ったが、
今、目の前で笑っている咲茉を見ると
やはり、咲茉と宏美は違う---------
「・・・・」
"パッ パッ"
「そう言えば、すぐ今も、女の人が私の前を
走って行きましたけど・・・」
「!? な------ ほ、本当か!?」
「え、え-------っ!? あ、鮎人さん!?」
「(まさか--------!)」