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プロローグ

「もう、十二年経ったか…」

          しんしんと雪積もる冬の日。


少し砂汚れの付いたローブを羽織った男は、ロッキングチェアから立ち上がると古めかしいカンテラを持ち隠し収納から一枚の紙切れを取り出した。


───────────白銀の髪を持つ少女の絵を。


◆ ◆


あれはカルバットがまだ新米戦士だった頃のことだろうか。

とある村での悲惨な出来事があったのは。





燃えゆく建物に血に染まった視界。

辺りには(くろ)く炭化し人ではなくなった“モノ”が沢山転がっていた。


燃やされ、炙られ、嬲り殺された者───────────どれも物言わぬ死体が……川を、大地を血と肉、欠片となりて埋め尽くす。

その光景は非常に痛々しいものであり、戦士となってもう十数年は経つガルバッドでさえ目を開けるのがキツかった。


自分は此処、ハーメル王国辺境の地ルーンホルムに少なからずいる傭兵の増援として送られてきた。

───────────一歩遅かったが。


どちらにせよ、早かれ遅かれ我らは負けていただろう。

今回の殺戮は異常だったのだから。


今日は満月の日だ。

月は人を狂わせるという伝説があり、同時に狼男の話もよく知られている。

それと少し似ているのだが、最後に撤退していった隣国ヘイムールの兵士たちには目が真っ赤で長く鋭い牙までついていた。

まるで、物語の吸血鬼を彷彿とさせるような。


少し剣を交えた輩もいたのだがこれまた強い。

知性も理性も全部が吹っ飛んでいるようで“文字通り”本当の化け物だった。

同僚のやつも死んで、背の高さを軽く超える死体の山ができた時、彼女を見つけた。





「た、すけて…。」


煤に血に濡れ、塗れてもわかる美しい白銀の髪。

ガルバッドは夢中になり、彼女の上に深く積もった瓦礫をどかす。


これが、後の英雄───────────《剣の(ソード・オブ)乙女(・メイデン)》だったのをガルバッドは知る由もなかった。





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