表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

見知らぬ本

作者: 植木天洋

気づくと、見知らぬ本があった。

 はじめは時々見つける程度で、あまり気にしなかった。

 祖父が読書好きということもあって、実家の祖父の部屋には四方に本棚があり、あふれた本が山積みにされていた。

 だから、大概の本には見覚えがある。

 しかし今、私の部屋に見知らぬ本がある。

 私も祖父に似て本好きで、友人と本の貸し借りもしていたので、知らない間に誰かが置いていったのだろうというくらいにしか考えていなかった。

 しかし、見知らぬ本は日に日に増えていった。

 いくら本好きの私でさえ、興味のもてないものばかりだ。

 しかも古くて埃がこびり付いていて、厭な臭いがする。

 古本の嫌いじゃないが、これはひどい。

 腐臭といっていいだろう。

 本の腐った臭いだ。

 

 臭いは日に日にひどくなり、部屋中に充満した。

 いくら換気扇を回しても、消臭剤をスプレーしても無駄だった。

 吐き気がする。

 私はたまらなくなって、見知らぬ本を何冊か抜き出してきれいに積み上げ、それからプラスチックのロープで十字に縛った。

 資源ゴミの日の早朝にそれを出す。

 ゴミ捨て場にまであの厭な臭いがしそうでぞっとしたが、見知らぬ本を捨てたという達成と安心の気持ちの方が強かった。

 

 それでも次の日になると、見知らぬ本は増えていた。

 腐臭は前よりひどくなっている。

 読みたいという気持ちにもならない。

 

 ――了――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ