股をかける勇者
魔王討伐のために召喚され、6年がたったころ。
「魔王は討伐された。
――俺たちの勝利だ!」
うおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!
俺は、ようやく魔王を倒したのである。
・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・
あれからというもの、俺は英雄として称えられた。
王国からは報奨金をたっぷりともらい、国民からも圧倒的な支持を得ている。
そして何より――
「ねぇ勇者、、、今夜、空いてる?」
「あ、あの・・・勇者様! わ、わたしと、、、その、、、」
これ以上はちょっと倫理的にも教育的にも悪いので割愛するが、
とにかくモテるのである。
凄くモテるのである。
一緒に冒険した仲間はもちろんのこと。
旅先で救った町娘。
殺されるところだったのを助けた魔物の女の子。
幼馴染。
極めつけは王様の娘まで。
年下の妹系から年上のお姉さんまで、とにかくモテた。
本当に異世界にきて良かったと思える。
「お前もそう思うだろう?」
「いや、知らんけど・・・」
俺の隣にいるのはパーティメンバーの男だ。
男女比率が女性のほうが多いため、同性のこいつとは特に仲がいい。
魔王を討伐した後でも、こうして定期的に遊んでいるのである。
「ほんと、異世界って良いことばっかりだって話さ」
「ま、モテるのは男としてうらやましい限りだな」
その通りだ。
異世界に来たらハーレム状態になるのがお約束。
男にとってこれ以上のことは無いと言える。
あ、ちなみにだが、俺に好意を寄せている女性とは、もうキスは済ませた。
もちろんそれ以上のことも、、、、、。
「ホントに、みんな可愛いよな・・・」
だが、俺が幸福に浸っていられたのはここまでだった。
不幸とでもいうべきことは、その一言から始まった。
「で、誰にするんだ?」
「ん?」
「だから、誰と付き合うのか決めたのか?」
最初は、何を言っているのかわからなかった。
誰と付き合う?
そんなの全員に決まっているだろう。
なにせ異世界は一夫多妻が普通なのだから。
「いや、そんなの全員だろ」
「・・・お前、まさか知らないのか?」
「え?」
「この世界は――」
「一夫多妻制じゃないぞ」
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・はあ゛あ゛あ゛!?
「え! マジで!?」
「マジだ」
「俺もう全員に結婚しようって言っちゃってるんだけど!」
「浮気をした者は、股をかけた人数分だけ指を切られる」
「10股しちゃってますけどぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!」
「良かったな! 両手か両足で済むじゃないか」
「全っっっっっ然、良くねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」
俺は許さない。
異世界で、何人も嫁をつくっている奴を。
俺は許さない。
異世界が、一夫多妻が普通だと言ったやつを――・・・。
完
始めるために必要なのは「勇気」。
続けるために必要なのは、「努力」と「根性」。
これらが合わさって、初めて「チャレンジ」ができる。
そうして積み上げたものは、やがて「力」となり――
「夢が叶う」のである。
まぁ、それはこの話とは全然関係無いんですけどね。