九
正直に告白すると、私は先生…教師が嫌いなのです。
そこに理由なんて存在しません。どうしてもというのなら少し違いますが近い所に当てはめますと、本能的に、と言っておきましょうか…
極力、先生と関わらないように今まで生きてきました。できるだけ先生に対して感想を持たないようにしてきました。
では、なぜ源城先生に対して私は観察したり、勝手に仮説を立て実験しようとしたのか。
暇だからです。
だってもう私の人生は終わったのです。
あの高校に落ちてしまった日から。
描いていたビジョンは音も立てずに掻き消えてしまった。
もうどうでもいいのです。
だからといって非行に走ったり、だれかれ構わず股を開くのは違います。そんなものでは暇つぶしにならない。自分が損をするだけです。
じゃあどうやって暇をつぶそうかと春休み中もんもんと考えていました。
そこに源城先生が現れたのです。
私は分かってしまいました。
源城先生はきっと理性が強い人です。どこか飄々とした雰囲気から私はそれを察知しました。
私は敢えて嫌いな職種の人間と関わる選択を思い付いたのです。そして、源城先生は私をその気にさせたのです。
でも源城先生が理性が強い人なのか確かめたわけではありません。十分な調査が、観察が必要でした。無気力だった心の奥に少しだけ何かが芽生えます。
自己紹介の発言も言わば源城先生に対する挨拶だったのです。
これから私自身さえ想像することのできないことに耐えられそうかどうかの軽いジャブです。
源城先生はやはり理性的です。その後の横顔で微笑んだのが挑発的で引っ掛かりますが、まあいいでしょう。私の予感はまず当たっていた。
釣りが好きというのと、彼女がいることもプラス材料です。釣り好きは短気な人が多いと聞いたことがありますが、素人の目から見ても釣りは知識と工夫が必要なものだから、きっと源城先生は揺るがないレンズ越しの目の奥で色々思惑しています。彼女は、ただ単に女性を知っている、ということです、女性に免疫がない男性は誤解しやすく思うのです。私は女です。先生は男ですから。
私は源城先生と色恋のうんぬんになるつもりではないのです。
私は理由も分からず嫌う教師と有意義な暇つぶしがしたい、そのためにはムキになられては興ざめです。様々な力で押さえつけるのではなく、私と先生とで──