七
仮説の次は実験です。
その機会は一学期も終盤に差し掛かった個人面談の時に行いました。
中間、期末、とテストが終わったタイミングで三日ほどかけて一年C組の生徒一人一人と源城先生が面談してゆきます。
出席番号順なので私は個人面談最終日の最後、まだ明るい昼のような夕方に行われました。
「座ってください」
名前を呼ばれ教室に入った私に先生が言います。
教室のまん真ん中の席を二つ合わせていて私が座ると目の前に先生が居ます。先生はファイルから細長い紙切れを二枚取り出し、私の机に置きます。テストの結果が印刷されています。
「綿貫さんは数学以外は全部九十点越えですね。塾に通ってますか?」
「通ってません」
「そうですか。数学で分からない所はいつでも質問しに来てくださいね」
「はあ…」
私の曖昧な返事に先生はわずかに苦笑します。そしてまたファイルから白い紙を取り出しました。
「空欄ですね」
進路調査票です。
「まだ一年ですから、今の成績をキープしていれば…数学以外はですけど、焦って考えることはないですが、選択授業が二学期から始まるのでおぼろげでも何かあれば言ってください」
「腐っても進学校ですもんね」
「……」
私の言葉に源城先生の目が一瞬鋭く光ります。怒っているのでしょう。
「数年前から有名大学への進学がないですからね。そう思うのも無理ないでしょうが、綿貫さんの気持ち次第です」
先生はいつもの調子で静かに言います。
やっぱり。源城先生は教師を分かってる。
私は唇の片方だけ上げて笑いを堪えます。
「源城先生」
さあ、実験です。
「はい」




