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二十二
ハンカチを受け取り、濡れた頬を拭います。
周りの生徒が私に注目していましたが、不思議と恥ずかしさを感じません。
それは、きっと。
それは、きっと、源城先生が皆から私の表情が見えない位置に立っていてくれたからでしょう。
「……洗ってかえします……」
私は急いでハンカチをスカートのポケットに入れ、姿勢を正します。
これ以上、補習の時間を削るわけにはいきません。
「……じゃあ、次の問題を……」
源城先生は普段と変わらない様子で黒板の前へ戻って行きました。
私は真っ直ぐ前を向いて源城先生を見つめます。
それは、もう観察のためではなく、数学のことを知るために見つめます。
数学を知って分かるために、私は源城先生から目を離さないことにしたのです。




