十六
お経の様に聞こえる教師の話す声、休み時間ごとに放牧されている私たち。
黒板の上に掛けられている時計の秒針は滑るように進むけれど、放課後は遠くて、解放されても家での時間は反省と自制の思考で終わるだけです。
こうした毎日をあと何回繰り返したらいいのでしょうか。
私の人生はもう終わったというのに。
「綿貫さん」
帰りのHRが終わり、騒がしい教室に源城先生の声が響きます。
「……はい」
まだ席に座ったままだった私はそのまま返事をします。
生意気な態度だったと思います。
でも、もう昨日の面談で実験とはいえそういう生徒だと源城先生には分かっているはずです。
「……」
私の横着な態度に源城先生は口を閉じましたが……
「っ……」
私は驚き、ざぁっと血の気が引きました。
源城先生が、また、あの微笑みを浮かべていたのです。
なんと、教師らしくない表情でしょうか。
私が入学初日に抱いた不信感の正体はこれだったのです。
心の中ではどんなに思われていてもかまいません。
だって誰にも分からないことだから。
しかし、分かるように思想を表に出されるのは困ります。
先生は源城先生は、私を観察している。
はっきりそう感じました。




